七里ヶ浜はアウトドア・ノマドには微妙だったので、私は次なるノマドスポットを求めてバイクに跨がった。
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そう、湘南を代表する観光地のひとつ、江の島だ。秋冬の平日なら人もそれほどいないだろうし、たしか最近はお洒落なカフェなどもあると聞く。人気のパワースポットでブログを書けばそれはそれははかどることだろう。
うれしいのはバイクや自転車の無料駐輪場があることだ。我が家からバイクで15分もあれば着いてしまう。いいノマドスポットが見つかれば、江の島に通勤、というのもわるくない。
ほう、平日の昼間だというのに思ったより人手があるじゃないか。仕事をしなさいよ仕事を。
ついでに江の島神社にお参りをして心を清らかにするもよし。この急な階段を自らの足で登ることに意味があるのだ。
エスカーとはなんぞ?大人360円と料金を取るので、どんな未来的なハイテク・ビークルに乗れるのかと思えば、単なるエスカレーターではないか。馬鹿にするのもいい加減にしていただきたい。お参りというのは自らの足で登ることに意味があるのだ。
とは言うもののなかなかの急傾斜である。一歩一歩、あわてずあせらず歩を進めるのだが、正直しんどい。登山を扱った映画『岳』を観たときは、体を鍛えあげて槍ヶ岳を目指す自分の姿を想像していたのだが、まだまだ先は長そうだ。
この「茅の輪」というのをくぐれば、罪穢(つみけがれ)を祓い清め、清々しい心になれるという。罪はともかく年相応の穢れがたまっているので、とりあえず5回ほどくぐっておいた。回数ではないのか?
江の島は観光地だが、ちゃんと人が住んでいるのである。こうした牧歌的な風景の路地はノスタルジックな感傷をもたらしてくれる。でもまた階段か。ふう。
江の島の中程から見下ろすマリーナの風景。秋風が心地よく絶好のノマド日和だ。足の痛みも忘れ、次第に心が躍ってくる。
おお。これはまさにアウトドア・ノマドにぴったりのカフェではないか。パラソルがあるのでMacBook Airのディスプレイが見えないということもあるまい。
その先へ進むと「IL CHIANTI CAFE」というカフェレストランを発見。R134の江の島の手前にあるイタリアンの姉妹店だろう。若い頃イタリアンの厨房で腕をふるっていたのを思い出し、しばし物思いに耽る。
平日ながら活気あふれるランチの風景。湘南らしくテラス席もあるし、混雑する時間帯を避ければ絶好のノマドスポットだと言えよう。
およよ。もうサムエル・コッキング苑?あらら?思ったよりぜんぜん早いな。
七里ヶ浜の洋服屋さんのおねえさんは「上まで30分くらいかかりますよ」なんつってたけど、正味15分ほどで到着してしまったではないか。ちなみにここがいわゆる江の島の山頂であり、展望灯台がある場所だ。わかったか田舎者たち!
そういえばここは入場料を取るんだった。サムエル・コッキング苑に入るだけなら200円で、シーキャンドル(展望灯台)に登るなら500円か。
サムエル・コッキング苑内のベンチ。なるほど金をむしり取りやがるだけあって、清潔で素晴らしい公園ではないか。木洩れ日のベンチでブログを書けばそれはそれははかどることだろう。
美しく整備された苑内を奥へ進むと展望灯台がある。
灯台下にカフェを発見。ここもノマドにちょうど良さそう。
灯台のすぐそばの広場にもテーブルとチェアが置かれている。おばちゃんたちが手作りのお弁当を食べながらギャーギャー騒いでいるので、ここはフリースペースなのだろう。
な、なんぞこれは?緑の中に突如現れる中国風建築。とてつもない違和感!
横浜在住のアイルランド人貿易商だったサムエル・コッキングが開園したと言われる(ウィキペディアまま)植物園内に、なぜこのようなモンキーマジックな東屋が!?
まさかサムエル、日本に住んでいたくせにアジア諸国文化誤解しまくり欧米人だったのか!あるいは横浜に住んでたから中華街が好きで、日本も中国も同じじゃね?みたいな軽いキャラだったのかサムエル!
まあでもとりあえず座ってみる。大陸の歴史を感じながらノマド。シュールな光景だ。
苑内にはフレンチトーストで有名なカフェもある。ちょっと見てみよう。
これは素敵なテラスやん!ほどよい広さの中庭スペースが気持ちいい。江の島の山頂近くにいるのだが、太陽の位置関係もあるのか、思ったよりディスプレイがよく見える。これくらいなら慣れてしまえば作業に支障はないのではないか。
うん、わるくない。カフェから響き聞こえる女子高生やおばちゃんたちの下品な笑い声が気にならないでもないが、こちとらお金も払わず近くに居座っているわけだからしょうがない。我慢しよう。
「なにあの人!パソコン?こんなとこで!」
女子高生の声が届く。ぐぬぬぬ。俺か?俺のことか?
「マジうけるー!」 「江の島でパソコンとか意味わかんねー」「自意識カジョー?ww」
あたりにパソコンを広げている者など、僕以外にいるはずもない。
「エロサイトとか見てんじゃね?」「エノコンマジうけるわー」 「ギャハハハハハwwww 超エノコン!」
エノコン?江の島でパソコンだからエノコン?
見知らぬ下品な女子高生たちに妙なニックネームをつけられてしまった僕は、iPhoneを首に挟んで、かかってきた電話に応えながら、忙しいふりをしてその場を離れた。
もちろん電話などかかってきてはいないのだが。
湘南ノマドの挑戦はまだまだ続く。