コラム/エッセイ

誰も知らない、一年中「旅しながら暮らす」季節の国内ルート

南北インドにネパール、タイ、インドネシア、マレーシアなどアジアを中心に、オーストラリアとか沖縄の孤島とか富山の雲に近い山荘とか、世界中を放浪している友人が帰ってきていたので、久しぶりに会ってたくさん話をしてきた。

茅ヶ崎のビーチでのんびりビールを飲みながら、世界中のおもしろい話をたくさん聞いたのだけれど、中でも興味を引いたのは、バックパッカーがエンドレスで旅を続ける国内ルートが存在するという話。

定職を持たない本物のバックパッカーたちは、訪れた土地で期間限定の仕事に就いてお金を貯め、また次の土地に移る、というのを繰り返す。
北海道の利尻島で毎朝三時から昆布を干す仕事をしばらくやったら、長い時間をかけて旅をして、沖縄の小浜島の黒糖工場で3ヶ月間サトウキビを狩って、次は京都の茶畑へ向かう、という風に、日本中を「旅しながら暮らす」拠点や、季節によって進むルートが複数存在するというのだ。

毎日会社できちんと働いている人からしたら、不安定きわまりない生き方に見えるだろうけど、よくよく聞いてみると、場所を転々としながらも、それぞれの土地にはその土地ならではの古くから続く「仕事」がちゃんとあって、意外とみんな「ちゃんと」働いて、ちゃんと暮らしているのである。違いは、居住場所が定まっているかいないかだけで、そんなに変わらないのかもしれない。

むしろ大企業だからと言って安心していられない現代では、その都度仕事を選べる彼らの生き方の方がリスクが低いと言えなくもない。

利尻島で昆布を干す、小浜島でサトウキビを狩る、京都の山奥で茶を摘む、という、土地に根ざした「実業」を額に汗してこなしている彼らの方が、毎日パソコンに向かって戯れ言をぶちまけるような「虚業」で暮らしている僕なんかより、ずっとずっとちゃんと生きている気がする。

最近はインターネットとパソコンさえあればどこでも仕事ができるというハイパーノマドがもてはやされているけど、もともと仕事なんてどこでもできるし、もともと僕らはとっくに自由だったんだなあと感慨深く思った。

彼らはそれらの土地ごとの仕事に、驚くほど真剣に取り組むのだという。
「生活のお金のため」にやりたくもないことをやっているのではないかと訝っていたが、「旅をしつづける」ことが何よりのヨロコビである彼らにとっては、その仕事さえ旅の一部であり、それはまさにイマココを生きているのであり、将来への不安や他人からの目を気にしてあくせくお金を貯めようとする僕らよりも、ずっとずっと豊かな生活をしているのだろう。豊か?豊ってなんだよ?

そんな話を聞いていたら、しばらくサトウキビを狩りに行くのも悪くないな、なんて思った。世界は広いけど、僕はまだまだ日本のことだってちっとも知らない。人生はまだまだ長い。ほんの数ヶ月間くらい家族に迷惑かけて、今まで見たことのない世界を覗いてみようか、なんてな。

つづく→

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▲ 世界を旅する彼女は、いつも笑顔がやさしい。

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