コラム/エッセイ

看板(ビルボード)の裏を見る。

2018/02/14/水  想像インフル。

加藤浩次さんがインフルエンザだと思ってスッキリ!を休んだんだけど、検査したら陰性だったんだって。うちの家人も熱出して死にそうになったので検査したら陰性で(数日後に罹患して陽性へ)、逆に俺はインフルの症状は出てたけど、熱もないしこれまで体験した地獄のインフルに比べれば軽症ってことで違うだろって思ってたら、「旦那さんがいちばん濃く出てますよB型」なんて医者に笑われる始末。

先日は帯状疱疹を疑って皮膚科に行ったら「違いますね。帯状疱疹では、ないです」と力強く否定され、まあだいたいにおいて、シロウトが自分で診断したらダメですね。とくにネットであれこれ調べられちゃう昨今は、想像〇〇の患者さんが増えているでしょう。

親父も生前、癌とか手術とかネットで調べて震えてたけど、専門医でも仕事でもないのにわざわざネットに傷病について延々と書き込む人って、ネガティブなことしか言わないですからね。不安を自分の外に撒き散らして解消しようとしてるだけですから、そんなん見ない方がいいのは言うまでもないです。Amazonのネガティブなレビューとかも、王様の耳はロバの耳って叫んでるだけです。

考えてみると、インフルエンザに限らず、俺たちが抱える問題とかって、だいたいが「想像〇〇」だったりします。あいつは間違ってる。子どもが言うこと聞かない。上司がクソだ。金がない。それみんな、想像してるだけで、現実は違うケースばかり。先日見た『スリービルボード』って映画でも、主人公が「想像戦争」してるだけでしたよ。街中敵だらけ、人生は戦争、みたいになっちゃってるけど、本当はそんなことない。目に見える看板(ビルボード)の裏を見ましょうよ、ってことです。老子が「現実を観なさい」ってのも同じ。俺は毎日「想像空腹」に襲われて、ラーメンばっかり食ってますがね。

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▲ 蕎麦屋なのにお客さんの九割が頼む平塚の有名店「大黒庵」のラーメンはシジミの出汁の真っ黒スープ。最近はジョウラン(大盛)が食べられないのでチュウラン(中盛)ドンパリ(超硬め)で。

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▲ インフルで隔離される親父と猫。

2018/02/12/月  くうっ。

ある小説を読んでいたら、あまりに格好よくて、天を仰いでしまった。くうって声が漏れて、書斎のソファに脱力した。顔がにやけてるのが自分でわかる。以前読んだときはなんも感じなかったのに。

家人がこしらえてくれた稲庭うどんを啜って、眉根をしかめる。本当にうまいもんを食うと、険しい顔になるのだ。市販の白出汁がおいしいのよ、と彼女は笑う。たしかに最近の既製品調味料はうまいが、じっくり焦げ目をつけた大ぶりの白葱の甘さと、舌にほろりとちょうどいい弾力の鶏肉が、のどごしのいい稲庭うどんを存分に引き立てる。インフルエンザ明けでまだ痛みの残る咽にビールを流しこめば、またくうっという音が漏れる。

おっさんになってきたせいか、最近は擬音が増えている。熱い湯に浸かればほわあああ。朝一の白湯を啜ればふうううう。冬の青い海を眺めてはああああ。食べすぎて動けなくなったらぶふううう。おっさんというか獣か。

擬音が漏れるときは、生きているという実感を得る。妄想的な思考が止まり、現実をそのままに味わっているとき、生を強く実感する。とくに、くうって声が漏れるときは、うん、こういう瞬間のために生きてるんだな俺は、などと大仰なことを思う。いい表現に触れて、うどん食って、ビール飲んで、くうっていう。ありがてえ。

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▲ 極上のフレンチや焼肉より、最近はハムエッグが好き。

2018/02/04/日 ママはツンデレ

うちの家内は双極性障害。昔で言う〈躁うつ病〉。楽しいときと沈むとき、明と暗がくっきり。元気なときはいつもニコニコ。猫が転げるだけで大笑い。いつも誰かが笑っていると、部屋にパッと花が咲いたようで、わが家は明るく眩しい。

でも、大きなイベントの後や、暮らしの疲れがたまってくると、ぐったりして、生活のあれこれができなくなる。灯もつけず、鉄仮面をつけたみたいな無表情で、ずっとソファに座ってる。僕はなかなか慣れないのだけれど、その都度だんだん思い出す。そうだ、ママはツンデレだったんだって。本来の意味とはちょっと違うけど。

長い時間を彼女と過ごしてると、ママみたいに明と暗を繰り返す生き方って、非常にまっとうなんじゃないかって思えてくる。誰よりも自然体。双極性〈障害〉とか言うけど、ちっとも障害じゃない。そんなもん世間が規定した社会生活を営む上での〈障害〉であって、むしろママのほうがこのシステマティックな社会で力抜いて自然に生きてる。

彼女は誰より〈今〉を生きてる。過去を悔やんだり、未来を心配したりしない。最近ようやく俺もわかってきたけど、今を生きてる人は、今を〈見て〉る。目の前の現実を見てる。窓際に丸まった猫。テーブルの上のコーヒーカップ。駄々をこねる幼子。今在るものを見て、愛でて、苦笑して、ただそれだけ。もう、過去を悔やんだり未来を憂いたりしない。何か起こったら、そのとき、その今、対処してる。力まず、構えず、自然に。

ママじゃなくて誰だって、心身にバイオリズムがあって、上がったり下がったりするのは自然の摂理。現代人は仕事や効率を優先してコントロールしてるだけ。

僕もママも、冬は太る。寒くて外に出ないので、家にこもりがちで、あたたかくておいしいもん食って動かないから。ストレスがつづけば酒量が増えるし、なくなれば飲まなくなるし、春がくれば痩せるし、夏になれば海や山を駆け回る。

ただでさえ寒くてつまんない冬に、ストイックに暮らしてなんかられない。ただでさえ苦しいときに、平均体重にシェイプアップしなきゃとか、部屋を綺麗にしなくちゃとか、追い打ちかけたくない。俺も最近は自然に還りつつある。だいたいデレデレだけど。ダラダラ?

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