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iPhone系ブログ『なまら春友流』を運営する春友(@spring_friends)さんが、来たる6月21日に横浜駅西口にオープンする『らーめん春友流』のプレオープン試食会に行かせていただいた。

『らーめん春友流』は、京急線の戸部駅か地下鉄ブルーラインの高島町駅が最寄り駅になるが、ふだん都会に出る機会の少ない僕は、いくつかの所用をすませるために横浜駅から店へ向かった。

横浜の空はすでに夏模様。ブッシュを替えて調子のよくなったビニールクルーザーの乗り心地を確かめながら、熱気を反射するアスファルトを軽快に進んでいく。駅から十分以上来たのだろうか。ちょっとした散歩で心も体も軽やかになった頃、R1の向かい側にラーメン屋とは思えない小綺麗な純白の看板が目に入る。

店内も一見するとカフェのような落ち着いた雰囲気。まだメニューなどの細かい部分が揃っていないとはいえ、男臭さのするラーメン屋の雑多な佇まいではない。カウンターの奥にいる店主・春友さんと目が合う。すこし痩せたのだろうか、女性ばかりか男性をも惹きつける甘い顔立ちが、いつになく精悍だ。夏にイケメンはよく似合う。映画『真夏の方程式』のポスターで青空の下に佇む福山雅治を思い出しながら、僕もそっと席について額の汗をぬぐう。

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すっとビールが出てくる。冷えたグラスとクリーミーな泡を見るだけで僕の喉がくぐもった音を立てる。ラーメン屋と言えば瓶ビールが王道だが、濃厚な豚骨醤油と一戦を交える直前に喉と胃袋に適度な刺激を与えるには、これくらいのやさしい喉ごしがちょうどいい。銘柄はサッポロのプレミアムビール『エーデルピルス』。これほど爽やかで上品な生ビールを、僕は他に知らない。

やがて運ばれてきたラーメンの見た目も、徹底して品がいい。駅からここまでの道すがらにギトギトの家系ラーメン店の行列をかわしてきていたので、春友ラーメンの落ち着いた佇まいには一瞬物足りなさを感じてしまうが、すぐにそれは錯覚であったことに気がつく。

大きめの丼につつましくおさめられたスープと麺に、タマネギの白とカイワレの緑が、ぐっと強めの清涼感を与えている。スープの色と立ちのぼる香りからは内包する豚骨の旨味が感じられるのだが、覗きこんだ丼に広がるのはどこまでも透明感のあるラーメンの姿。熱そうに見えるのにどこか涼しげなラーメン。胃袋を脳から刺激するツカミは完全に店主の勝ちだ。

やや小さめのレンゲでスープをすくう。思ったよりずっとあっさりしている。フレンチのシェフに教えられたように、すべての具材を混ぜ合わせてステージを統一させてから、一息に麺をすする。硬めに茹でられた卵ちぢれ麺のしたたかな歯ごたえが妙に心地いい。品がありながらも強めの濃厚豚骨醤油スープに負けない卵麺の力強さと、それらをやんわりとまとめる母のやさしさのような野菜たちの演出。なるほど、そういうことか。

僕らは凍える冬の夜にクリームシチューを食べ、戦争写真の中に子どもの笑顔を見つける。うだるような夏にはキンキンに冷えたビールを飲み、かと思えば冷えた胃袋に熱々の豚骨スープを流しこんで嬉々としている。冷と熱。光と影。成長と堕落。こってりとあっさり。相反するものに触れつづけることで、僕らは人生に喜びを見いだしているのかもしれない。それは、しあわせの方程式と呼んでもいいんじゃないだろうか。そんな大げさなことを思いながら、ひたすらに麺をたぐる。

濃厚なのにあっさりとしたその相反するスープの奥深さは、ブロガーとラーメン屋を両立させる店主のコシの強さすら感じさせる。

オートバイの免許が取れる頃には、もう夏は本番をむかえているだろう。真夏の陽光を浴びながら、いま一度あの生ビールとラーメンの上品なマリアージュを味わうために、ふらりと『らーめん春友流』を訪れることにしよう。