my drunk cat / OceanCreep
これ以上飲むと明日の仕事に差し支えるから、ビール一本でやめておこうとか、明日は休みだけど大事な約束があるから、このワインが空いたら終わりにしようとか、明日の現実と今夜の悦楽を天秤にかけて、酒の海に溺れないようにするのが大人の飲み方だ。
僕は、仕事で滝のように汗を流す夏の平日は、アルコール度数がやや低いオーストラリアビールを水代わりに喉に流しこむが、秋冬のビールは明日と引き換えにするほどの喜びを与えてくれないので、週末にしか飲まない。
しかし、どんなに節制して、スマートな大人の飲み方を心がけていても、人生にはお酒に抗いがたい夜というのが存在する。夜に美しいのは何も月だけではないのだ。
愛する人と向かいあって傾けるシャンパン、大きなプロジェクトを成し遂げた仲間たちと酌み交わすビール、失意の底に沈む大切な友人を支える友情と酒、数十年ぶりに再会した旧い友人たちと朝まで思い出に浸りながら飲む酒。そんな酒に酔う抗いがたい夜に、二日酔いの境界線はぼんやりと霞み、いつの間にか見えなくなってしまう。
「風邪薬か二日酔いの特効薬を発明すれば、ノーベル賞がもらえる」という話を聞いたことがある。なるほどそうかもしれない。風邪薬と言ったって、僕らが今使っているのは鼻水や咳などの症状を抑えたり解熱させるだけの対症療法でしかないし、二日酔いだって、せいぜい荒れた胃に漢方薬を流しこむか、肝機能を強化させる程度だろう。
最近は、お酒を飲む前にウコンを摂取する人が増えている。僕も飲み会の前には、駅の売店でウコンドリンクを買ってぐいっと飲み干してから酒宴に向かうが、実際に効果が出ているのかどうかは正直判然としていない。
ところが先日、@asuka_xpさんの『オススメされた「ハルウコン」を飲んだら、効果が凄くて二日酔いもなくスッキリ起きられたっていう話 | め~んずスタジオ』という記事を読んで、ハルウコンという商品を知った。
記事によると、ハルウコンとは、
ということで、さっそくネットで注文してみた。
春ウコンサプリ ハルウコン 沖縄長生薬草本社 【こだわり商品研究所】
休日前の某月某日。昼過ぎから飲みはじめ、夕方から加速し、夜半にはいとも簡単に二日酔いの境界線を越えてしまった僕は、朦朧としながらもどうにか寝る直前にこのハルウコンを服用した。
恥ずかしながら翌朝、僕はまだ酔っていた。職業運転手である僕は会社からアルコールチェッカーを支給されていたので、試みに計測してみるとアルコール濃度は0.1mg。0.15mg以上で酒気帯び運転になるので、酔っているわけではなさそうだが、頭はボーッとしているし、状況判断がいつもより遅い自覚がある。
やはり限度を超えて飲みすぎてはさすがのハルウコンでも効果は薄いのか。そう思いながらiPhoneアプリの睡眠ログを見ると、今まで見たことのないような美しい眠りの波形が描かれているではないか。
たいていお酒をたくさん飲んだ晩の睡眠は非常に浅く、快眠度もかなり低いのだが、この日は脅威の快眠度83%を記録している。あらためて冷静に自身の様子を観察してみると、たしかにまだ頭に靄がかかってはいるものの、気力体力ともに、戦えない状態ではない。食欲もある。
つまるところ、ハルウコンによって爆発的に強化された肝機能によってアセトアルデヒドの分解が促進されて、睡眠時に全身がしっかりと休息を取れたのだろう。
通常の飲み会程度の酒量であれば、ハルウコンを飲んで寝れば、たしかに翌朝にはスッキリ起きられることだろう。
世界はバランスでできている。楽しいお酒に溺れて限度量を超えてしまえば、翌朝には胃袋を裏返してじゃぶじゃぶ洗いたいほどの不快な二日酔いが待っているのが、世の理(ことわり)だ。薬草を使って無理やり身体機能を促進させるのは理に反しているような気もする。
だけどこれからもきっと、抗いがたい夜はたくさんやってくるだろう。ハルウコンを常にポケットに忍ばせて、二日酔いの境界線をなるべく遠くに押しやりたいもんである。