噂どおりに、正統後継機種とされる「iPhone 5s」とカラーが豊富な廉価版とされる「iPhone 5c」が出ましたが、いろいろと情報を眺めていると、Appleはどうやら単純に性能と価格で差別化を図っているわけではなさそうです。
複雑化したラインナップは、ジョブズ亡き後の迷走のように思えてしまう反面で、わかりやすいデザインコンセプトの違いを見ると、かつてのAppleらしい明確な差別化なのでは、というような気もしてくるのです。
シャンパンゴールドの違和感。
iPhone 5sからシャンパンゴールドという新色が追加されました。AppleのWebサイトでも、iPhone 5sのトップページはこのゴールドカラーに包まれています。
僕は個人的に、このシャンパンゴールドに代表されるようなAppleのエレガントなデザインが非常に苦手です。
わかりやすく言えば、トランスルーセントの初代iMacやカラフルなクラムシェル型iBookなどの、キッズ向けのようなポップでカラフルな筐体が好きで、現行のMacシリーズのような、クールでスタイリッシュなデザインにはちょっと引いてしまうところがあります。
と、まあ僕の趣味はどうでもいいのですが、それにしてもシャンパンゴールドという日本のガラケーブランドが好みそうなカラーを、デザインには定評があるAppleが、Webサイトのテーマカラーにまでしてしまったことには若干の違和感を感じます。
ここまで高級感を演出する必要があるのでしょうか。
初代iMacを彷彿とさせるカラフルなiPhone 5c。
対してiPhone 5cは、丸みを帯びたシェイプも五色のカラーリングも、予想以上にポップで(いい意味で)チープでした。iOS 7のデザインとの絡みもあるのだろうし、昨今の流行でもあるのでしょうが、ここまで淡いパステルカラーにしたのも個人的には意外でした。
そもそもシンプルを信条としているAppleが、廉価版iPhoneなどというものを売り出すということこそが、ジョブズ亡き後の迷走だなどと僕も思っていたのだけど、5sと5cのデザインコンセプトのここまで大きな差異を目の当たりにすると、そうでもないような気がするのです。
ラインナップの複雑化ではなく区別化。
思い出すのは、Appleを追放されたジョブズが1997年に復帰したときに行った「ラインナップの区別化」です。
このときは、コンセプトが定まらずに複雑化したラインナップを整理することで、ユーザーは迷うことなく製品を選べるようになり、iMacやiBookの爆発的ヒットに繋がりました。
iPhone 5cは新興国のための廉価版ではなく、次世代を担うiMacのような位置づけ?
『iPhone 5cは「廉価版」にあらず。Jony IveがiOS 7搭載用としての理想を追求したデバイスだ | TechCrunch Japan.』によると、iPhone 5cが途上国に売り込むための安価版だというのは、メディアが勝手に導いた空想だったことがわかります。
Appleは単純に機能と価格を抑えた廉価版で販売台数を伸ばそうとしたのではなく、かつてのiMacシリーズのようなカラフルでポップなラインナップを復活させて、プロ(ヘビーユーザー)向けにiPhone 5sを、一般ユーザー向けにiPhone 5cを用意することで、新しい風を吹きこんでiPhoneの裾野を広げているのではないでしょうか。
iPhone 5sがメインストリームで、その下に位置するのがiPhone 5cなのではなく、両製品ともがコンセプトの違うメインストリームなのです。
むしろiPhone 5cのほうが、かつてのiMacやiBookが担ったようなAppleの顔になっていくのかもしれませんね。
iPhone 5cは予約販売するのに5sはしなかったり、Appleのトップページには5cのみが表示されたり、その他細かいところを見てみても、Appleが5sよりも5cに力を入れているのは明白です。
価格が大幅に下がっているにもかかわらず機能はiPhone5と同等以上のiPhone 5cと、指紋認証センサーや処理スピードの向上などのわずかな進化しかないiPhone 5sとを比べると、ヘビーユーザーの僕もどちらにすればいいのか迷ってきてしまいます。いずれにせよ、もうすぐですね。いくつになっても楽しみです。
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