Guitars around the Camp Fire / Rob Lee
先日キャンプ場で呑んだときの話だ。
昼前からビールを開けて、焼鳥や秋刀魚なんかをつっつきながら日本酒をやっつけているうちに、暗くなる頃にはいい感じにできあがってしまった。
楽しくなっちゃった酔っぱらいには音楽が欠かせないので、僕らは誰かが持ってきたBluetoothのスピーカーから流れるメロディに体を揺らせていた。
ところがこのBluetoothのスピーカーというやつは、その無線電波を奪ってしまえば誰でもスマホなどのデバイスから音楽を飛ばせるので、酔っぱらいたちがどんどん自分のiPhoneやiPadをつないでは好きな曲をかけてしまう。
やれ玉置浩二だ、やれGREEN DAYだ、やれ米米CLUBだ、やれNorah Jonesだ、槇原敬之だ、フジファブリックだ、Stevie Wonderだ、ブルーハーツだ、oasisだ、とジャンルも時代もへったくれもなく、酔客らしく自分勝手な選曲で、めちゃくちゃなミックスが延々とつづく。
けれどこれが、驚くほど、楽しいのだ。
誰かと飲んでいるときに好きな音楽やミュージシャンの話になることがあるが、どれだけうまく説明しようとしてもけっきょく核心が伝わらなくてもどかしくなることがあるだろう。音楽ほど説明が不要で不毛な表現はないのだ。
だから、Bluetoothスピーカーを使ってその場で好きな音楽をみんなに聴かせることができる、というのは、僕らの想像以上に場を楽しく、明るくしてくれる。
若い頃あれだけ夢中になったのにいつの間にか忘れていたポップソングが流れてきて、胸に熱いものがこみあげる。
ひとつの曲から話が広がって、切なくて間抜けなエピソードに笑いの花が咲く。
少年の頃から聞いているのに未だに第一線で活躍するミュージシャンに、あらためて大人ならではの憧憬を抱く。
なつかしい曲のイントロに一喜一憂する大人たちの姿は滑稽だが、彼らの脳裡には切ない青春の記憶が甦っているのだ。
Bluetoothというテクノロジーが人生を豊かにする、とまではいわないが、それでも僕らの心にぽっとあたたかいものが灯った気がした。
小洒落た呑み屋もわるくないが、たまには外で呑むのもいいもんである。