コラム/エッセイ

朝から気が乗らない、という幸せな知らせ。

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今日は掃除や雑務、勉強のつづきなど、いろいろやることがあったんだけど、朝から気が乗らなかった。

歯を磨きながら、海へ行きたいと思った。太陽を浴びたいと思った。

一人で浜辺に座って、ぼーっとしようと思った。

そういえばしばらく雨が続いてお日様を見ていないし、そういえば昨日はいつの間にか濃密に勉強をしたので頭の中がパンパンになっている気がする。

朝から気が乗らない、というのはこういうことなのだ。

最近は、心と身体の声がよく聞こえるので、それに素直に従うことにしている。

ゆっくりと浜辺を歩いて、頬を撫でる風を感じ、二の腕を灼く陽光を感じ、穏やかな秋の気配を感じる。

自分の心の声もよく聞こえる。身体の痛みも、心地よさも、よくわかる。

一時間も海辺に座っていたのだろうか。

家路につく頃には、頭の中がさっきよりずっと軽くなっていた。

それを具体的に説明しようと試みれば、昨日脳みそに仕入れた、活字と数学的な論理で構成された過剰なインプットデータが、じわじわと溶けて、僕なりの言葉と概念に変わって、記憶チップに定着したという感じだろうか。

本から得た情報が、自分の知識として落ちついたのだろうか。

知得から体得へ動いたのだろうか。

いずれにせよ、帰り道を歩く僕の足取りは軽く、世界はさっきよりずっとクリアに見えた。

きっと上手に瞑想をすると、こういう境地に辿り着くのだろうな。

十五分やそこらでそうなれるというのは、たしかに魅力的だな。

でも僕は今のところ、こうして海辺を歩いてみたり、電車の車窓から流れゆく街を眺めてみたり、真っ暗な浴室にキャンドルを灯して湯船に浸かったり、書斎のテーブルに足を放り投げて天井を眺めてみたりして、こういう体験を味わう方が気に入っている。

最近家内がよく言う。

「ずっと長いあいだ、こんなゆったりした豊かな時間を持てていなかったね。ぜんぶ逆だったね」

僕は頷く。

「ホントそうだね。お金や心に余裕があるから、こんなゆったりした時間が持てるんじゃないんだよね。こんな一見無駄な豊かな時間を持つから、お金や心の余裕が入ってくる『余地』が生まれるんだもんね。

本当に、信じていたことのほとんどが、逆だった。」

のんきに海辺を歩いていたせいで、午前中に予定していたことは何ひとつできなかった。

けれどそんな小さなこととは比べものにならないほどの、大きな大きな幸せへの潮流の一番流れの速いところへ、僕らはふたたび戻ることができたと確信している。

さあ、今日の残りは何をしてすごそうか。楽しみでたまらないな。本当にいい天気だ。

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