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試写のお誘いがあったので、『ザ・サークル』って映画を見てきたんだ。

トム・ハンクスにエマ・ワトソンって二大スター共演で、インターネットとかSNSを題材にしたお話。

ネットやSNSってこれからどうなっていくんだろう?

っていう観点で、なかなか考えさせられたよ。

今って、右見ても左見ても誰も彼もがスマホ触ってるけど、スマホとかって、行動心理学的には「人間関係」の象徴なんだって話がある。

スマホや携帯ってのはけっきょく、電話やSNS、メールを通じて、他者と繋がるためのツールなんだよな。

だから、つねにスマホを手放さない人は人間関係を重視し、あまり触らない人は自分の個人的な人生を大切にしてる、なんて見方もできると。

SNSを足場にしない。

この映画では、エマちゃんが、SNSを通じて自分の日常のすべてを世界中にシェアすることになっちゃって、自分で『トゥルーマン・ショー』をやっちゃうんだけどね。

程度の差こそあれ、SNSってのはそうやって、自分の日常をさらすってことなんだよな。

しかも、自分で作為的にも無意識的にも「いいところ」だけを見せようとしちゃって、だんだんと心に歪(ひず)みが生まれたりして。

この前テレビで某女子アナが「インスタグラムって自分の素敵なところだけを見せるための場所でしょ?」って真顔で言ってて、これくらいまっすぐ思えればめでたいわ……と苦笑したけれどさ。

俺もブログやコンサルを仕事にしていた頃、活動の中心がネットやSNSだったこともあって、けっこうしんどい思いをしたことがある。

その頃は、ネットやSNSが「人生の足場」になっちゃってたんだよな。

ブログを書くためにこれをする。

SNSに載せるためにどこそこへいく。

インスタ映えするものを食べる。

もてはやされるようなことばかり求める。

お客さんが来るようなことばかり書く。

そうやって、SNSを通じて、他者に依存してた。

他者の価値基準に寄りかかって、自分を見失ってた。

まさに「いいね!」のために生きているような……。

とくに日常がうまくいってないフェーズは危うい。

目の前の現実には不安や不満が充ちているから、ネットの世界に偽りの自分を表出させて、他者の「いいね!」やコメントに寄りかかろうとする……自分でも知らぬ間に。

やがて、その空虚な他者評価に絶望する……なんてのはネガティブにすぎるだろうか。

なんでもかんでもオープンにしない。

インターネットの歴史って、つまるところ、情報開示の歴史だよな。

ウィキペディアで世界中の人々が情報をまとめて、

ツイッターで有名人の行動がつぶやかれ、

YouTubeには犯罪シーンが流れ、

フェイスブックやブログで個人的な苦悩を吐露してみたり、

2ちゃんねるでは個人名が飛び交い、

愛を囁きあったはずのLINEがリークされ、

この世のあらゆる事象がオープン化されようとしてる。うかうか立ちションもできない世の中だ。

でも、俺たちは、自分のすべてをさらけだして生きていけるようにはできていない。

エヴァの人類保管計画みたいに、皆がひとつに溶け合うなんてのは幻想だ。

そこの開示のバランスがうまく取れる人はSNSを楽しめるだろうし、そうでない人がハマってしまうと、まさに自分を見失う。

みんなは輝いているのに、自分の日常は曇ってる。

そんな錯覚に陥るのだ。

俺はそういうところをふらふらしたこともあったけど、今は、そもそもそんなに多くの他者と繋がる必要はないじゃんよ、というところなので、SNSとはある程度の距離を置いてる。

まずは、目の前の人、だろう?

群衆に流されない。

SNSが危ういのは、群集心理に流されちゃうってのがやっぱり大きいよ。

この映画でも、世界最大のインターネット企業の社員たちが、未知なるテクノロジーにエキサイトして暴走していくんだけど、はたから見てると、かなり現実離れたクレイジーな集団になってる。

でもよく考えたら、俺たちだってそうだなって思うと、ぞっとしたよ。

俺もどっぷりSNSに浸かっていた頃は、みんながiPhone使ってると思ってたし、みんながフェイスブックやって、みんなネット大好きで、みんな日々成長しようと努力して、みんな仕事がんばって、みんな意識高いと思ってた。

でもそれって、俺のSNSにいる人たち__この広大な世界の片隅のひどく限定的な人たち__であって、みんな、ではない、当然ね。

学生時代に、自分が属していた集団で流行ってるものが世界基準だと思ってたあの頃と、なんら変わんないじゃねえか。

俺の現実世界には、ガラケーしか持ってなくて世界中を旅して笑ってる奴もいるし、そんなにお金稼げなくても毎日好きなところに好きな人と住んで遊んで暮らしてる奴もいる。

なんだよ、iPhoneいらないじゃん。

……とまでは思わなかったけど笑、ずいぶん狭い価値観に囲まれてたんだなと思うことはあったな。インターネットは、世界を広げているようで、ひどく限定的にしちゃってるんじゃねえかって。

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試写会の後のトークショーで、はあちゅうさんが「SNSが好きな自分としては、こういう映画でSNSの危険性ばかりがフォーカスされるのはイヤだな」みたいなこと言ってたんだ。

まあつまりそういうことで、好きな人はどんどんやればいいし、ホントはそんなに楽しくないって人は、スマホを閉じて空を見上げたり愛する人とチューとかしてればいいんじゃないのって話だ。ネットも現実だから、うまく楽しめばいい。

ちなみにゲスな俺は、最近あまりSNSで絡んだりはしないけど、けっこう覗き見はしてる。写真週刊誌読むみたいにねぐへへへ。じゃあね。

「スマートフォンは嫌い。IT産業が世界中の人間に手錠をかけたと思ってる。便利だけど、貧富の差が開いたことへの影響も感じる。なるたけアナログで行きたい」

ビートたけし

11月10日(金)公開だってー。