コラム/エッセイ

日常と非日常の真ん中にあるアート。松山智一個展「Same Same, Different」

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松山智一の個展「Same Same, Different」を見にいってきた。日本では10年ぶりらしい。そういえば10年前も見にいったっけ。

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会場に着くとすでにトークイベントがはじまっていて、静かに後方の席に着席。昼前から人に会ってちょっと疲れていたので、NYで活躍するアーティストと美術の専門家のトークなんて理解できなくて眠いだけだろうと思っていたら、とってもおもしろくって、いつの間にか話に引きこまれてた。

「アートって美術館の中だけじゃなくて、日常にいくらでもある」

って話に頷いた。駅の屋舎の手すりの造形だったり、神社の鴨居だったり、子どもが描いた落書きだったり、日向ぼっこしている猫から伸びる影だったり、デスクランプだったり、クオリティの善し悪しはともかく、アートって日常に溢れてる。それを、俺たちがどう受け取るかってこと。

アートって、回路なんだな。あらゆる表現や自然の事象から、自由に感じ取る回路を持てば、美術の素養なんかなくたって、誰だってアートって楽しめる。音楽だって、小説だって、海だって、なんだって、まあ。

そんなことを考えてたら、鎌倉で歯科医をやってる友人が最前列で頷いているのが見えて、あいつも同じこと考えてそうだな、と笑った。俺だって現代アートのことなんてちっともわからないけれど、それぞれの作品がいろんな方向から刺さって、すごく楽しめたよ。

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友人は鳥などの動物をモチーフにした作品群がひどく気に入ったらしく、ずいぶん長い間眺めていたが、俺は逆に、その鳥の無数の〈目〉が不快に感じられて、そのセクションにいるのが苦痛なほどだった。

あとで話してみると、彼はそこに自然のプリミティブなエネルギーを感じたと言っていて、なるほどそれは理解できた。重なりあうレイヤーの明白なラインに、ポロックみたいに顔料が散っていて、躍動感がある。

俺の場合は、この1年ちょっと、親父が死んでから日常の外の世界の人たちと接することが多く、他者の視線を過剰に意識して自己否定に繋がるような時期があったので、〈鳥の目〉におぞましい何かを感じたのかもしれない。まあ、自意識というやつだろう。

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松山智一の作品で俺が好きなのは、好きというかいつも気になるのは、〈人物の顔〉だ。彼の描く人物の顔は、どれも一見無表情の能面のように感じられて、でもじつは瞳や眉毛などが微妙な表情を見せていて、哀しいような、切ないような、いやこれじつは楽しいのかな、と想像が膨らんでいく。

奈良美智が描く女の子なんかも、なに考えてんのかわかんない怖さとか奥深さがあって、まあそういう包容力がアートには必要なのかもしれないけど、マツの描く人物の心象はより一層わけわかんなくて引きこまれる。なんか、その人物画が自分自身みたいに感じられる瞬間があったりして。

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まだ日本ってアメリカなんかと比べるとアートが日常に接していないけれど、アートって思ってたよりずいぶん身近なんだなと再確認した。

松山智一って日米で暮らして、音楽とか美術とかさまざまなカルチャーがミックスされたバックグラウンドがあって、ヒップホップのサンプリングみたいなエディティングが特徴のひとつで……、なんて素養があれば、楽しみ方は広がるかもしれないけど、まあその前に、そんなゴタクはいいから、自由に感じ取れば、それがいちばん楽しい。

すこし話せる時間があったので、作品のことを本人に聞こうと思ったけど、それはやめておいた。だってもう、作品が能弁に喋ってるから。

「ぼくのアーティスト論は……なんて言ってる人を見ると、それは人が言うことだ、と思うんです。カウズは喋らないでしょう? 作品が喋るんです」

松山智一

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▲ メタルのオブジェは、やっぱり実物の迫力スゴいね。圧倒された。

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▲ メタルってまわりの色彩を反射するからおもしろいんだな。

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▲ ポップで多彩なカラーリングが素敵なんだけど、モノクロにしてもなんだか趣があるなあ。

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