書斎では、iMacでテレビ観てますのね。
正確には、iMacで〈StationTV Link〉ってアプリを使って、リビングにあるBlu-rayレコーダーからWi-Fiで飛ばして、32インチのサブディスプレイに出力して観てる。このアプリ、Amazonで買えるんだよおもしろいでしょ。
何か作業するとき、テレビくらいのノイズがあったほうがリラックスするんだよね。静かすぎると落ちつかないの。サウンド・オブ・サイレンスがうるさくて。
この〈StationTV Link〉、Wi-Fiで飛ばすので子どもたちがYouTubeとか観まくってると繋がらないことがあったり、ちょっとクセがあるんだけど、書斎で流し観するくらいにはちょうどいい。たまに固まったりするけど。
もちろんBlu-rayレコーダーに録画した番組も観られるよ。
で、さっき「ワイドナショー」観てたら、井上尚弥が出てたんだけど、いやあ、ホントスゴかったよねえ、この間のWBSS初戦の70秒KO。
View this post on Instagram内側から打ち抜くジャブ。 これで右ストレートに繋げる距離タイミングが完全一致‼︎ この瞬間はスローに感じるほどゾーンに入っていた…。 過去ナルバエス戦でしかなかったゾーンが再び…。
蛇のように絡みつく電光石火の左ジャブで相手の動きを止めて、無防備で棒立ちみたいになったところを強烈な右でKO。たったの二発。
あのシーン、本人はスローモーションだったんだって。ジャブが当たったときには、次の流れも、ゆっくりじっくり見えてわかってたって。いわゆる〈ゾーン〉ってやつ。
なんの本で読んだのか忘れちゃったんだけど、人間って、自分で判断や選択をしているようで、じつは「脳がオートマチックにしている反応を、後から遅れて意識が見ている」んだってね。
つまり、俺がコーヒーを飲もうとカップに手を伸ばすとき、その数秒前にはすでに脳がそうさせるように指令を出しているんだと。
俺という意識は、あたかも自分でそのように動いているような気がしているけれども、じつは脳によって動かされている自分を眺めているだけなんだと。
〈ゾーン〉っていうのは、そういう、脳の反応と意識の認識の間の数秒間を、脳が知覚することなんじゃないかしら。だからスローモーションに見えちゃう。
俺がエロサイトをクリックするときと、その数秒前に脳がそれを選択している。その間の〈誤差〉が見えてしまうような。例えがよくわかんないけど笑。
コメンテーターのピアニストの人は、ゾーンに入る機会が多いって言ってた。とんでもない早さで両手のすべての指が複雑な動きをしているときなんて、身体が憶えている技術だから、ふだんは意識できていないんだけど、ゾーンに入ると、どの指がどのように動いてどの音を出しているかまで理解できてしまうという。
ときには「人がつくった曲なのに、自分がつくった曲のように思えてしまう」ことがあるそうで、松ちゃんとか他の人は「それはちゃうやろ」って爆笑してたけど、脳がクロックアップされてゾーンに入ることで〈楽曲と一体化する〉なんてことはじゅうぶんあり得ると思うんだけどね。
ボクサーとピアニストだと、やっていることが違うからゾーンに入る確率は違うんだろうけど、俺もたまに、ごくたまに、お、今ゾーンに入ってるなってときがあるよ。
風情や景色の洗練された温泉に独りで浸かって心が開いているときとか、頭の中で混沌としている思考が磁石に吸い寄せられる砂鉄みたいにまとまって、淀みのない言葉がすらすらと湧き出てくる。
書斎でぼけーっとしてるときとか、オートバイで田舎道を疾走しているときとかにもたまに訪れるけど、いつも決まって、その溢れ出る言葉を書き留めようとパソコンやメモ帳に向かうと、そのゾーンから出ちゃうんだ。そこが、俺が抽んでた文章を書けないひとつだと思うわ。
俺は自分のそのゾーンを、カッコつけて〈静謐の泉〉とか〈ロイドの家〉とか呼んでるんだけど(意味はメンドクサイから説明しない)、そこにいるときは、迷いや不安の答えがすべて出るし、思考がクリアになって、淀みなく言葉が溢れ出てきて、きっとスピリチュアルな人とか作家とかはこういう境地を出入りしているんだろうなと思うな。
もしかしたらイケナイ薬物をやると、そこへ入れることもあるんじゃないかな。直感として。
しかし、日本人ボクサーがラスベガスでタイトル戦……なんてのも夢じゃなくなってきたねえ。楽しみでござるでござる。