クロスのボールペンを修理に出した。
中学の入学祝いにもらったものなので、もう三十年以上経っている。くすんで年季の入った風情は気に入っていたのけれど、ペン先が出てこなくて使えなくなっていた。
もらった当時はガキだったので、こんな金ぴかのおじさんくさいペンなんて趣味が悪すぎて使ってられるかよ、なんて思っていたのだけれど、いざおじさんになってみて、じっくり手に取ってみて、ああ、いい物をいただいていたんだなあと、気づいた。
クロスというメーカーは、その使用年数にかかわらず機構上の故障に対する永久保証がついていると最近知って、ダメ元で販売店に持ちこんでみた。
かっちりとスーツを着こなした男性の販売員が丁寧に説明してくれたところによると、クロスの永久保証は基本的に修理ではなく同等の新品との交換になるとのことで、現品は返却されないのだという。
大切な形見の品でもあったので、使えなくとも思いでの品として取っておくか、あるいは新品に交換してもらってたくさん活躍させるべきか、すこし迷って、その旨を伝えてみると、保証はできないけれど、大切なものなので返品してもらえるよう頼んでくれるという。
人の大切なものを大切にできる仕事というのは、とっても素敵だなあと、あたたかい気持ちになった。僕らは繋ぐために生まれてきたのだと、大げさなことを思ったりして。
どうなるかわからないけど、楽しみに待つことにする。