スターバックスのCEO、ハワード・シュルツはコーヒーを売っているのではない。彼が売っているのは、職場でもなく家庭でもない「第3の場所」だ。
引用元: スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則.
僕は数えるほどしかスターバックスコーヒーを利用したことがないのだけれど、以前広尾かどこかのスタバで「おなかの調子が良くないんだけど、なんか胃にやさしい飲み物ないですかね?」と訊いたら、ちゃんと日本茶が出てきて驚いたことがある。たしかに、ただコーヒーだけを売っているわけではなさそうだ(お茶も売っている、ということではないよもちろん)。
家でも仕事場でもなくて、ほっと落ち着ける「第3の場所」。
僕だったらすぐにビーチとか森の中とかを思い浮かべてしまうけれど、都会の人にとってはそれがスタバなのかもしれない。
スタバのこの哲学はAppleのそれに似ている。Appleは魅力的なハードウェアやソフトウェアを売っているのではなく、それらを使った「新しいライフスタイル」を提供しているからこそ、ここまでの成長を遂げられたのだろう。
コンピュータ言語ではなくマウスで動かすパーソナルコンピュータの普及で多くの人の可能性が広がり、ノートパソコンのおかげでいろんな場所で仕事ができるようになり、iPodでポケットに数千曲の音楽を入れられるようになり、iPhoneやiPadを使えば今までできなかった様々なことがあらゆる場所でできるようになった。
だけどこれらはすべてAppleの発明ではない。パソコンもマウスもMP3プレーヤーもタブレットPCも、元々は他の会社が産み出したものだ。それなのに最終的にいつもAppleが製品として完成させて世の中に広められるのは、スティーブ・ジョブズがその製品の先に「人々のリアルな生活」をしっかりと見据えていたからだろう。
かつてSONYのウォークマンがそうだったように、一つの製品で人々の生活を、世界を変えたい、という強い気持ちが、Appleの完成されたプロダクツの根底に這っているのではないだろうか。
だから僕もときどき自分のやっていることを振り返ってみたりする。僕がやろうとしていることは、人々に何をもたらそうとしているのか。僕が作ろうとしているアプリやサービスは、人々の生活にどれだけの影響を与え、どれだけの人々に笑顔をもたらすことができるか。そうやって考えていくと、どんな職業においても、答えは自ずと出てくるはずだ。
仕事の対価は「どれだけ多くの人をどれだけたくさん喜ばせたか」によってもたらされるものだから。そう考えると僕をあれだけ興奮させるサッカー選手が何億円もの大金をもらっているのも頷けるというものだ。