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2009年公開の細田守監督の人気アニメ映画『サマーウォーズ』。DVDを持っていて、何度も観ているのについテレビ中継も観てしまう@RKlock_です。

何年かぶりに観て、あらためていいなあ、と思ったので、僕が好きなサマーウォーズをまとめてみます。

大家族への憧れ


Day 215 – Maggie’s 40th / Phil and Pam

はじめて観たときから何よりも僕の心をとらえるのは、陣内(じんのうち)家の大家族の情景です。僕は昔から大家族への憧れが強かったので(サザエさんとかゴッドファーザーとかw)、陣内家の情景はとてもまぶしくうつりました。

最近、おじいちゃんやおばあちゃんが一緒に住んでいたらまた違うんだろうな、と感じることが多くなりました。

「子どもはいくつになったら一人でお風呂に入れるべきなのか」とか「夏の庭の雑草の処理はどうするんだろうか」とか、そういった日常における些細な疑問に対して、おじいちゃんとかおばあちゃんの意見を仰ぎたくなることがあります。

電話をかけて聴くほどでもないけど、ネットにある情報とかじゃなくて、自分を育ててくれた親に聴いてみたいことってけっこうあるんだな、って。

時代の移ろいによって変わるかもしれないけれど、間違っているかもしれないけれど、連綿と続いてきた「家族の教え」みたいなものに寄りかかってみたいときっていうのが、子育てをしていると特にあります。

それは僕が家族を持っているんだ、という強い実感をもたらしたりもしてくれます。

広い庭と縁側と夏とスイカ

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細田守監督自身が言っているように、長野県上田市が舞台となっている陣内家の情景には「日本の原風景」が投影されています。

広い庭をのぞむ古くて大きな日本家屋の縁側で風鈴の音を聴きながらスイカを食べて夕涼みをするという「古き良き日本の夏の風景」が、やや誇張気味ではあるものの、本作でもまぶしく描かれています。

鎌倉や大磯なんかに行けば、まだまだ素敵な古民家を見かけることがありますが、それでも数はだいぶ減っているようです。

イタリアやスペインなどへ行くと、今でも古い建物がたくさん残っているのを見ることできます。地震大国である日本だと「倒れたらまた建てる」という考え方があるので一概に比較はできないけれど、ヨーロッパの伝統的な町並を守る心は素敵だと思います。

その一方で、町並や食べ物や芸術などの古くからの文化がずっと残っていて、外国の人たちが憧れるそういった欧米諸国の多くが、経済的に困窮している現況を考えると、複雑な気持ちにもなります。

古き良きものを愛しつづけていては、もう人々は豊かになれない時代なんかなあ、なんて感傷がおりてきたりもします。

栄おばあちゃんという心の支え

「家族どうし、手を離さぬように、人生に負けないように、もしつらいときや苦しいときがあっても、いつもと変わらず、家族みんなそろって、ご飯を食べること。いちばんいけないのは、おなかがすいていることと、独りでいることだから」__(栄おばあちゃんの遺書より)

生きていれば、つらいことや苦しいことだってあります。そういうときに、心の中にどれだけ味方がいるかどうか、が大事なんだと最近強く思います。

自分はけっきょく独りなんじゃないか、と思ってしまう状況って、誰にでもあるんです。長年連れ添った友人も会社の同僚もみんな、心の底では自分のことなんか必要としてはいないんじゃないかって思ってしまうことがあります。

そういうときに「何があろうとこの人だけは絶対に自分の味方だ!」と思える人間が、僕らには必要です。その象徴が、本作の栄おばあちゃんじゃないでしょうか。

「おなかがすいていることと、独りでいることがいちばんいけない」というのは、すごく頷けます。

人はお腹が空いているときと独りでいるときは、本当に「ろくなことを考えません」

ある本にも書かれていましたが、幸せな人っていうのは、たくさんの人に囲まれている人のことです。

お腹が空いていて孤独ながら幸せな人なんて、この世にはいないのですから。

「募集人員、一名なの」

Natsuki

本作のヒロイン・夏希が冒頭で、振り返りながらこの台詞を言うシーンがあります。とても可愛らしい仕草で、男の子(だったおじさんも)だったら誰でも、眩しさを感じるでしょう。

いつかテレビで細田監督が言っていたのですが、このシーンのアニメーションには相当の労力が注がれているそうです。

たしかに、このシーンで主人公が憧れている先輩の愛らしさを一発で観客に植えつけることに成功していますよね。

心に届くエンターテイメント

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インターネット上の仮想世界OZ(オズ)を舞台に人工AIと戦うというデジタルで近代的な設定にもかかわらず、観終わった後にやさしい爽快感が残るのは、栄おばあちゃんを中心とした大家族の風景やヒロイン・夏希とのやりとりがもたらす「あたたかさ」のおかげでしょう。

ハラハラドキドキして、たくさん笑って、ほろっと泣かせる。まるでチャップリンの映画のような「心に届くエンターテイメント」作品に仕上がっています。

まだ観ていない方は、ぜひこの夏に。たまにはエアコンを消して、夏を感じながらご覧になってはいかがでしょうか。