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不本意ながら完全に忘れていたっ!
かつて誰よりも何よりも愛したこの映画のことをふいに思い出して、まだ冬でもないのに、しかもあらためて観なおしたわけでもないのに、衝動に駆られてこれを書いています。
厳しく澄み渡った寒さの中にこそ、人間のあたたかさが感じられる。ファンタジーをリアルに変える映像の魔術師の長編デビュー作をぜひ、秋の夜長にオススメします。
『Love Letter』
監督:岩井俊二 助監督:行定勲
出演:中山美穂・豊川悦司・柏原崇・酒井美紀 ・加賀まりこ
公開:1995年 日本
あらすじ・解説
天国の恋人に向けて送った一通のラヴレターがきっかけで、埋もれていた二つの恋が浮き彫りになっていくラヴ・ストーリー。監督・脚本は今作が劇場用長編映画デビュー作となる「Undo“アンドゥー”」の岩井俊二。撮影は「夏の庭 The Friends」の篠田昇。主演は「波の数だけ抱きしめて」以来4年ぶりの映画出演となる中山美穂で、一人二役に挑戦して、ブルーリボン賞、報知映画賞、ヨコハマ映画祭、高崎映画祭などで主演女優賞を獲得した。共演は「NIGHT HEAD」の豊川悦司と、これが映画初出演となる酒井美紀、柏原崇ほか。ヨコハマ映画祭作品賞、監督賞、主演男優賞(豊川)、主演女優賞(中山)、撮影賞(篠田)、新人女優賞(酒井)を受賞した。95年度キネマ旬報ベストテン第3位、同・読者選出ベストテン第1位。
引用元: あらすじ 解説 Love Letter – goo 映画.
オープニングから心に触れる圧倒的な映像美
冬の物語です。街は白い雪に覆われ、人々は厚手のコートを着て、暖にあたります。
そこに暮らす何の変哲もない人々の生活の息吹が、雪景色の中にやさしく浮かびあがってくる映像は、降り積もる雪のようにしっとりと心に触れてきます。
僕は何度見ても、このオープニングシーンで一気に物語の中に持っていかれます。
まずシーンありきで、そこに物語を添えるような感じですね、岩井監督は。
ファンタジーをリアルに変える映像の魔術師
「岩井俊二監督は、映像は世界レベルだけど、ストーリーは学芸会」
などと揶揄されることがあるけど、それは違う。
「岩井俊二監督は、ファンタジーをリアルに見せることができる希有な映像作家」
だと、僕は考えています。
リアリズム映画でもなければファンタジー映画でもなければアニメでもない。
そんな中途半端でグレイな脚本ばかりを書くので、賛否両論が大きく分かれる表現者だと思いますが、その表現力に疑う余地はありません。
特に本作は、突飛な物語でありながら、それを感じさせない世界観(美しさ)と人間のあたたかさを感じられると思います。
中山美穂と豊川悦司その他共演陣の初々しさ
あらためて考えてみると、1995年公開ですから、今から17年も前の作品なんですね。
ミポリンもトヨエツも酒井美紀もみんな若くて初々しい。
「それが山田さん家ィやったら、手紙は届かへんのや」
というトヨエツの独特の関西弁は当時バラエティ番組でも流行ってましたね(Wikipedia)。
中山美穂は、この作品が生涯ベストムービーなんじゃないでしょうかね。
個人的には、ミポリンのおじいちゃん役を演じていたクマさんこと篠原勝之さんがとてもいい味を出していて好きでした。
人生ってステキでしょ♫
僕はこの映画を観るといつも、「人生ってステキだ!」という思いに駆られます。
じんわりとだけど、生きているというただそれだけのことが嬉しくなって、もっともっと生きたくなります。昨日より眩しくて、あの頃より楽しい日常を、もっともっと生きるんだ、って、そういう気持ちになるんです。
そして考えてみれば、僕が好きな映画ってそういうものが多いみたいです。
どんなに残酷で、切なくて、涙がこぼれてしまっても、最後の最後には「もっと生きたい!」って思える映画。
逆に言えば、若い頃好きだったような、さんざリアルに世界を描いて、問題提起をするだけして、あとは観客に投げっぱなしジャーマンスープレックスを放るような社会派映画は観なくなりましたね。
かつてデーブ・スペクターが「映画は楽しむために観るもんでしょ?映画観て落ち込んで生きるのが辛くなってどうするのよ?」みたいなことを言っていて、熱い映画少年だった僕は「こいつなんもわかってねえ」とか憤っていましたが、今は少しデーブの言うことも理解できます。
ともあれ、泣けます。
冬はまだまだ先ですが、本作で、澄み渡った冬の雪景色とその中に生きる人々の熱い息吹をしみじみと感じてみてはいかがでしょうか。