IMG_0081 / Collin Allen
ジョブズは、iPodやiPhoneにカバーを付けて美観が損なわれるのをひどく嫌ったという。現実的に、常時携帯する精密機器を裸で持ち歩くのには勇気がいるが、彼の言わんとしていることはよくわかる。
本当に美しいものは、よく見つめなければわからないことが多いものだ。
ある友人の車に乗せてもらったとき、足元に敷いてあったビニール製の大仰なフロアマットが気になったので「なんでこんなの敷いてるの?」と訊くと「車が汚れちゃうじゃん」と言われて、ちょっと驚いてしまったことがある。
彼が乗っていたのは国産の大衆車だったのだが、どこかのカーショップで買ってきたビニール製の不細工なフロアマットのほうが、プロのカーデザイナーがこしらえた総合的なデザインを断然汚してしまっているように僕には見えた。よりよく見せようとして逆に不細工に見えてしまうのは、女性のへたくそな化粧に似ている。たぶんあなたは素顔のほうがずっといい。
車の外観にしても、バンパーなんかの小さな傷に大騒ぎして、ウン万円も払ったり車両保険を使ったりして綺麗に直す人が多いけど、そもそも車って、僕らを快適に安全に移動させてくれるためのツールであって、バンパーは衝撃を和らげる緩衝装置なんだから傷があるのは自然じゃないか、と思ってしまう。
Fiat 500 / Moyan_Brenn_BE_BACK_IN_SEPTEMBER
ファッションも同じで、アクセサリーやら帽子やらをがちゃがちゃ身につけるより、シンプルな服装をしているほうが、その人自身の魅力が見えるような気がする。
整形を繰り返した挙げ句に、見えない手で後ろから引っ張られているみたいにつっぱった肌よりも、年相応の笑い皺にこそ、愛らしさが刻まれるのだ。
いずれにせよ、イタリア人みたいにバンパーぶつけながら縦列駐車できちゃうような、頑丈で雨にも強い大衆車みたいなiPhoneを早く出してほしいですね。