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東京の実家へ、新年の挨拶に行ってきた。

昨年の正月は親父が海外へ行っていて、一昨年は僕ら家族が忙しくて、なんだかんだで2年ぶりの再会となった。

久しぶりに会った親父は、白に近い金髪にイタリア製のデニムを身につけて、家の中でもデッキシューズを履いていて、あいかわらずデーハー(派手)でスタイリッシュだった。

親父は、六十も半ばを過ぎた今もなお、表参道の交差点近くの美容室で、毎日ハサミをふるっている。

何年か前に引退を考えたようだが、いざやめるという段になったとき、仕事をしていない自分を想像して、あまりの恐ろしさに踏みとどまったのだという。生涯現役とまでは言わないにしても、お客さんが来てくれる以上はハサミを持ち続けるのだそうだ。

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昼すぎにみんなで初詣へ出かけた。家の近くにある「大本山永平寺別院 補陀山 長谷寺」というところ。

ふだんあまりこういうところへ行かないせいもあってか、境内にそびえ立つ観音様のあまりにも立派で荘厳な立ち姿に、僕は思わず息を呑んだ。

親父は派手なサングラスを外すと、僕らにお賽銭を配ったりお線香を持ってきたり、お坊さんや観音様が見えやすい位置に誘導してくれたりと、せっせと気を配って動き回ってくれた。

僕はその姿を見ているだけで、目頭が熱くなるのを感じた。

昔はイケイケで自分勝手で、おっかなくてしょうがなかったあの親父が、僕らに気を使いながらも、何度も目を閉じて観音様に手を合わせている。

小さな孫たちを観音様の前に連れてきて、親父はやさしい瞳で言う。

「みんな健康でいられますようにってお願いしなさい。いつもありがとうございますって言うんだよ」

僕はその姿を後ろから眺めながら、手を合わせて親父に言われたようにぶつぶつとつぶやく。みんなが健康でいられますように。いつもありがとうございます。

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シャンパンやワインを飲みながら、昔のことや将来のことなど、いろんな話をした。

親父は赤ら顔で言う。

「今思えば、おまえを美容師にすればよかったなって思うこともあるよ。若い頃から仕込めば、お店もあるんだから、それなりにはなれただろうよ。けれどね、やっぱり自分の確固たる意志がなければ、何事をも成しえない気もするんだよな」

僕は深く頷く。

どんな道であれ、どんな職業であれ、自分自身の熱い気持ちがなければ、自分だけの道は拓けないのだと、僕も思う。

以前の僕だったら、なんとも思わなかったかもしれない。

だけど今、自分の意志で、熱い気持ちを持って、自分の人生を切り開こうと、毎日淡々と歩を進めるようになって、親父の言うことがすごくよくわかる。

と同時に、あなたの息子がもっともっと立派になった姿を、早く見せてあげたいという、殊勝な気持ちが湧いてくる。

久しぶりに親父に会えてよかった。こんなカッコイイ親父はそうそういないぜ。

僕は親父に自分が今考えていることや今年の決意表明などを高らかに宣言したかったけれど、それはぐっとこらえて、観音様にそっとお願いをした。

「仕事やブログや社会的成功の夢を叶えてほしいけれど、それは自分でがんばります。だから、みんなが健康でいられますように。そしていつもありがとうございます」と。

今年こそは、自分の力で何かを成し遂げられるんじゃないだろうか。今夜は、そんな気がするのだった。

2014年1月2日午後9時45分 誰もいないキッチンにて。食べすぎで胃が重い。

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