小学生の娘たちに「テレビに出てる人で誰が一番好き?」と聞くと、即答で「志村けん!」と答えます。
バカ殿なんか、高校生の息子も一緒になって笑いころげてる。
僕が子どもだったドリフ全盛期ならいざしらず、あれから30年以上経った今でも、子どもたちの心をわしづかみにする志村けんって、すんごくないですか?
ずっと同じところに立っているってことは、ずっと前進し続けているってことですよ。
小学生の僕にとっても、ブラウン管のヒーローは志村けんでした。
けれど成長するにつれて、チャンネルはたけちゃんマンに奪われ、とんねるずやウッチャンナンチャンへ移ろい、思春期にはダウンタウンにとどめを刺された。
有吉も言ってたけど、日本中の若者がダウンタウンに憧れて、お笑い芸人を目指したんです。
天才・松本人志がそれまでのお笑いをすべてぶち壊した!と騒がれていたその頃、志村はあいかわらず今までと同じスタイルで子ども相手に淡々とやってました。
最近、そのダウンタウンもやや落ち目ですが、逆に志村は、ふたたび勢いを増しているように見えます。あるいは今までもずっと、上がりすぎず下がりすぎず、ちょうどいい高さを安定飛行していたのかもしれません。
そして四十路を目前にした僕自身も、かつてあれほど影響を受けた松ちゃんのシュールな笑いより、志村のベタベタなコントのほうに惹かれるようになってきた。おっさんになって、志村に戻ってきたような感じです。
志村はずっと同じスタイルでやってきたけど、いつも新しいことに挑戦してきたんです。
「コント」という大枠の中で、新しい「ギャグ」や「キャラクター」をどんどん試していく過程で、アイーンとか変なおじさんとか、売れる「持ちネタ」が生まれてきた。バカ殿だってよく見てみると、新しい要素が加わっていつも進化してる。
「オレたちは、基本的にコントを作ってる中で出たキャラクターだから、“岡村も、自分で5分でも10分でもいいからコントやれよ”って。そのなかから何か出てくるんだから。それを考えるのが嫌だから、みんなやらないんだよ」__志村けん
ダウンタウンもナイナイも、もうコントやらないですよね。ちょっと前に松ちゃんがNHKでやったけど、正直ひどかった。そりゃ普段トーク番組でタレントいじってばかりいて、いきなりコントやってもダメですよ。30年コントだけやってきた志村に叶うわけない。
ベテランはみんな司会業とかトークに行っちゃうけど、志村はあいかわらず顔を白く塗って道化を演じてる。
毎年一発屋が出ては消えて、という激しい変化の時代に、この「同じスタイルで、新しいことにチャレンジしていく」という姿勢は、お笑いに限らず、あらゆる仕事においても、本当に大切なスタンスだと思う。
「ディズニーに学べ!映画イベントの成功と集客の秘訣」にも書いたけど、現状維持は後退でしかない。志村が30年前と同じことをやっているように見えるってことは、30年間前進し続けてきた、ってことですから。
最近、勝間和代さんの『無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法』って本を再読したんだけど、2007年に書かれた本だからもう情報が古いんですね。使うツールとか書籍とかの情報が、今やもうあまり役に立たない。
でも、勉強法の基礎的な考え方とか、ビジネスに必要なスキルや考え方とか、根底にある大切なテーマは錆びてないんです。今読んでも充分タメになる普遍的なことがたくさんある。
一番大切なのは、いくつになっても自分を磨いて進化していくってこと。それがよく伝わってきます。
僕も志村のように、鼻の下のばしてエロい顔しながらも、進化しつづける道化になりたいもんです。