象の神様は言った。
「人にはどんな欲があって、何を望んでいるか、そのことが見抜けるやつ、世の中の人たちが何を求めているかが分かるやつは、事業始めてもうまくいく。上司の欲がわかっているやつはそれだけで早く出世する。」
人々が『もっと速くて長い距離を走れる馬』を欲していたときに、ヘンリー・フォードは自動車を作った。世の中の誰もが『携帯電話は通話をするためだけの機械』と信じていた中で、スティーブ・ジョブズはiPhoneを生みだした。
僕にはそこまで大きな人々の夢を叶えることはできなさそうだけど、僕にだって人を喜ばせることはできるはずだ。
僕が朝起きていちばん最初に接するのは家内だ。キッチンテーブルで作業をしている僕の傍らで、彼女は朝食やお弁当の支度をして、子どもたちの衣服や持ち物を揃えている。家内は何を求めているだろうか?
朝が弱い家内はまだ眠りたいはずだ。僕が代わりに家事をやってあげれば楽にはなるだろうけど、彼女はきっとそれを望んではいない。「あなたはあなたのやるべきことをがんばっているのだから」とでも言うだろう。どうやら今彼女のために僕ができることは無さそうだ。だからそっと声をかける。
「ママ、いつも朝早くからがんばってくれてありがとうね。無理しないで、何かあったら言ってよ」
家内は「うん、ありがとう」と言って微笑む。何もしてあげられなかったけれど、なんだか気持ちがいいし、夕飯の後片づけは僕がやろうと決めた。
会社へ行けばいろんな人に会う。それぞれ何を欲しているかを考えてみると、同じ会社に属してはいても、人々はずいぶん違う方向を見ていることがわかった。
ある人はとにかく収益のことばかり考えていて、ある人は僕にもっと自分の仕事を手伝ってほしいと思っていて、ある人は楽な仕事が回ってくることばかり望んでいて、ある人は自分の価値をみんなに知らしめたいとばかり願っていて、ある人はとにかく気持ちよく働きたいと思っている。
だからといってそれぞれの望みを叶えてあげることはできないし、それでは会社はうまく回らないだろうけど、みんながそういう別々の考え方でいるのだと理解していると、やるべきことが以前よりクリアに見えてくる。
優先順位の最上位にある「会社の利益」という目的の下に、合理的で最適な手段やそれぞれの欲求をミックスしていくと、簡単ではないけど最善の方法がわかるのだ。
家に帰れば子どもたちが矢継ぎ早に話しかけてくる。保育園や学校であったことを聞いてほしい、テレビで見たおもちゃを買ってほしい、ドーナツが食べたい、一緒に遊んで欲しい。幼い子どもは素直なので望みがわかりやすいが、それでもこちらが “望みを理解しよう” と意識していると、いつもよりくっきりと彼女たちの想いが伝わってくる。今すぐにドーナツやおもちゃを用意することはできないけれど、ソファで膝に乗せて話を聞いてあげることはできる。
中学生のおにいちゃんは、だんだん気持ちをまっすぐに表さないようになってきている。大人になるということは、どこか哀しいことでもある。それでも悩み多き年頃の彼の望みを察することは、家庭をあたたかくする。
ブログを書こうとして、読者の顔を思い浮かべる。彼らは、僕のブログに何を求めているのだろうか。僕は人の役に立つ記事が書けているだろうか。僕にしか書けない、僕だからこそ人を喜ばせる記事というのはどういうものだろうか。誰かと同じようなことばかり書いていないだろうか。
そうやって考えていくと、有名ブログやプロブロガーの方たちが、どんな形で人々の欲望を満たしているのかが少しずつ見えてくる。最新のiPhoneやMac情報を誰よりも速く的確に伝えてくれるブログ、クオリティの高いアプリをたくさん教えてくれるブログ、手軽で美味しい料理を教えてくれるブログ、様々なライフハックを紹介するブログ、価値ある書籍を教えてくれるブログ、美味しいごはん屋さんを教えてくれるブログ、好きな女の子の心を開かせるテクニックを教えてくれるブログ、読むだけで心がほっこりするブログ。
僕もそれなりの期間ブログを書きつづけてきて、それなりにアクセスが増えて、それなりのお金が入ってくるようになった。でもそれはよくよく考えてみると、誰かの望みを叶えることができたからこそ、お金という対価になっているのだ。
大会社に勤めていたり、複雑な職種の人には実感が薄いかも知れないけど、ブログでお金をもらうと、“誰かの役に立てている” という感慨がけっこう大きくて、それはすごく幸せなことだと思う。
いろんな人のいろんな欲望を推測して熟考していると、世の中が以前よりすこしだけシンプルに見えてくる。人間関係はもとより、会社でやるべきこと、家庭でやるべきこと、ブログに書くべきことがクリアになる感じだ。
自動車やiPhoneほどのイノベーションは無理でも、“人が欲しがっているものを先取りする” 訓練をつづけていれば、稼ぎだけでなく、人生そのものが豊かになるような気がする。
今日は少しでもあなたの役に立てただろうか。
商売道具を磨くことは、あのとき掲げた夢を磨くこと。 | CLOCK LIFE
もっともっと人を喜ばせたいから、収入の10%を寄付してみる。 | CLOCK LIFE