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自分が問題を抱えているかもしれないという可能性に、心を開いたのだ。自分に問題があるということに気づいたその瞬間に、希望を感じたのだ!(本文より)

人の間と書いて『人間』。僕らは、他人との関係性を保ってはじめて人間たり得るのかもしれない。

僕らの実生活における悩みや問題の多くは、人間関係のもつれからきているのではないだろうか。家庭、学校、職場、街、どこへいっても人間関係があって、好意的な人がいれば、イヤな人もいる。だけど生きていかなきゃならない。

そんなすべての人間関係の根元には、小さな「箱」があるって、知ってましたか?

会社や学校に、イヤな人はいませんか?

どこにでもイヤな人っているもんです。尊敬できるんだけどウマが合わない人なんてのもいるでしょうし、あるいは、熱く愛しあって一緒になった夫婦や恋人に対して、負の感情を抱いている人もいるかもしれません。

そんなときって、お互いが自分が正しくて相手が悪いと思っていることが多いものです。

端から見るとどっちもどっちなのに、当人たちは「自分だけは正しい」と心から信じて疑いません。普段はクレバーで状況判断に長けている人でさえ「あいつが〜だから!」と相手の非を盲目的に主張したりしているのを見ると不思議になります。

じつはそれって、自分の小さな「箱」に入ってしまっているからなんだそうです。その箱に入ってしまうと、世界が歪んで見えてしまうんです。愛していた人が憎たらしい人に、大事なことがどうでもいいことに、そして自分自身すらも……。

自分に騙されている?

すべては、自分がやるべきだと思ったことをやらなかったところからはじまります。本書ではそれを「自分への裏切り」と呼んでいます。

たとえば、赤ちゃんが夜泣きをしているときに、隣で眠っている妻を心の中で責めるといったことです。自分が起きていって赤ちゃんをなだめてもいいが、自分は朝から大事な仕事があるし、子育ては妻の仕事なのにどうして俺がやらなくちゃいけないんだ!と、自分を正当化しはじめます。妻が起きないのがいけないんだ、と。

自分を裏切った人は、自分を正当化するだけではとどまらず、相手を非難しはじめます。自分の小さな「箱」に入ってしまった人は、本来の姿よりも自分を正当だと思いこみ、他人を本来の姿よりひどい人間だと思い込んでしまうのです。

これを哲学では「自己欺瞞」というそうです。

じこ‐ぎまん 【自己欺瞞】 自分で自分の心をあざむくこと。自分の良心や本心に反しているのを知りながら、それを自分に対して無理に正当化すること。

引用元: 自己欺瞞 とは – コトバンク.

だけど実際は、自分で自分の心を欺いているというのはちょっと違う気がします。むしろ無意識のうちに他人を責めて、自分が悪いとは思っていないからたちが悪いのです。自分に騙されているといった方がいいかもしれません。

ともあれ、僕がここで「箱」の話をするのはこのへんでやめておきましょう。

ビジネスマンじゃなくても、すでにこの本を読んだことがある人も、すべての人に読んでほしい!

この本はアメリカのある会社でのエピソードをもとに書かれている所謂ビジネス本ですが、ビジネスとは関係のない人も含めてすべての人間に読んでほしい一冊です。

人の間で生きていくうえで、誰もが忘れてはならないことだからです。

毎日学校へ通う子どもたちも、不甲斐ない部下を怒鳴り散らす上司も、昨今テレビを賑わすいじめ問題に関わる人たちも、それを見て憤り悲しむ人たちも、不条理な扱いを受けて歯を食いしばっている人も、イルカを守るために人間を攻撃する人たちも皆、一度この本を通り抜けてほしい。

また、すでにこの本を読んだことのある人も、もう一度、自分自身にしっかり照らし合わせて読み返してほしい。全人類がこれを知れば、たぶんちょっとは、世界が明るくなると思うから。

「箱」の存在を知らない人に「箱」の話をするな。

本書の終わりの方にはこうあります。

すでにそのことを知っている人以外には、箱などの言葉を使うな。自分自身の生活に、この原則を活かせ。

たしかに本書を読むと、どれだけ多くの人が「箱」に入っているかが見えてきます。外へ出れば、あの人もこの人も、みんな箱入りやないかい!と思ってしまうかもしれません。だから、たとえば身近な人にはこの本の話をしてあげて、箱から出してあげたいと思うかもしれません。

だけど、他人の「箱」に意識を傾けている時点では、あなた自身もまた「箱」に入っている可能性が高いと言うことです。

誰かを非難しているときには、その原因は相手にではなく自分にある。

つまりそういうことらしいです。

そう、これを書いている僕だってね。

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おわりに

すごく感銘を受けた本なので、たくさんページに折り目を入れてラインを引っぱってレバレッジ・メモにまとめたので、ポイントを書き出して紹介しようかとも考えましたが、やめました。

内容はすごくシンプルだけど、それを忘れないで日常を過ごすのはそれほど簡単じゃないからです。

だから本書は対話式の物語調で書かれています。もっとポイントを絞ってわかりやすく書けるところを、わざわざリアルな人間の対話という形をとることで、深みを与えているようにも見えます。

個人的な見解ですが、こういうことは、小説や絵本などの『表現』のほうが向いているのかもしれません。心の深いところに届けたいことですから。

ということで、あえて具体的な「箱」の説明はしませんでしたが、好奇心とモヤモヤを抱いていたら、是非読んでみてください。

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