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渋谷区千駄ヶ谷にある伝説のラーメン店「ホープ軒」

実家が近かったので子どもの頃から食べていましたが、気づけば20年ぶり

背脂チャッチャ系のギトギト東京豚骨ラーメンの代表格として大人気だったお店だけど、洗練された現代のラーメン業界の中で、あの味やスタイルは変わってしまったのか。あるいはあの頃のままやっているのか。

それだけを知りたくて、久しぶりにのれんをくぐってみました!さあ、ホープ軒との闘いがはじまるぞ!

最寄り駅は「千駄ヶ谷」か「外苑前」

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▲ 近くには東京体育館や神宮球場、明治神宮外苑などがあり、緑が多い素敵な街並み。

かつて村上春樹さんもこの辺をうろうろしていたというし、とても気持ちのいいこの界隈なのに、まさかこんなギトギトのラーメンがあるとは、これ不思議。

外観はともかく、清潔になっていて不安な店内

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▲ 黄色い看板は変わってない?ちょうちんもいい感じに汚れてます!

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▲ おお、懐かしいプラスティックの食券は健在!お店のおにいさんがそばに立って、親切に教えてくれます!こんなに親切だったかホープ軒!?

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▲ 歩道に半分はみ出ているこの台は、立ち食い用テーブル。急いでるタクシーの運転手さんや混雑時には、ここに大人が顔をつきあわせてラーメンを啜ります。

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▲「下で立ち食いもできますが、上なら座れますよ」と親切に言っていただいたので、今日は2階席へ。

えっ!?店内めちゃくちゃきれいやん!

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▲ おそろしくデカい寸胴鍋が2つもグラグラ煮えています。キッチン内もよく磨かれてる。

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▲ おじさんがグラスを運んできてくれました!親切すぎるぞホープ軒!

かつて数十年前、私の記憶が確かならば、バットの上に並べられた無数のビアタン(この小さいグラス)の底にジャスミン茶の濃縮液が入っていて、店主がそこへおもむろにホースで水をバーッと入れて、そのお茶を客が勝手に取って飲む、という、不潔きわまりないセルフサービスシステムだったと思うのだが!

いや、僕は世の事象をおもしろおかしく大袈裟に語りがちな人間だから、自分で自分の記憶をねじ曲げている可能性もある。

そんなことを考えながら口にすると、ふわっと爽やかな風味が広がる。ジャスミン茶は変わっていないようだ。

というかスープがあまりにもあれなもんで、このジャスミン茶がメチャクチャうまいんだよね。

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▲ ハシやレンゲ、ニンニクやブラックペッパーの置かれたカスターセットも、とっても清潔!

ふつうのお店なら当たり前だけれど、これはヤバいんじゃないか!

お店がこんなに清潔になってるってことは、味もマイルドになって、女性や子どもにもやさしい生ぬるいラーメンになってしまってるんじゃないのかっ!

脂オーバー・ザ・ギットギト!全然変わってないワイルドな豚骨醤油www!

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▲ ドーン!と数十年ぶりに僕の眼前に姿を現したるは、ラーメン(¥700)。

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▲ うわー!なんだこりゃー!油浮きまくってるー!

浮いているというか、表面全体を油が覆ってますね!しかも数ミリの厚さで!

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▲ スープ全体を覆う透明の油に浮くのは、大量の背脂!アブラ in アブラ!

ここまで油まみれだと、ギトギトというよりサラサラに感じられる不思議。

一口飲んでみると……

うおう!

濃い!

キタ!

超絶ワイルドな豚骨醤油スープがズッコーン!と強烈に舌を痺れさせる!

う、うまい!そして、なんて品がない、いや、カッコつけないまっすぐな豚骨スープなんだ!

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▲ モチモチの中太麺は、そんなにいいよ!と遠慮してしまうくらい、しっかりとスープと油を持ちあげて、テカテカに輝いている。

うむ、むぐむぐ、うまい!

ちょっとやわらかい気がするけど、うどんのようなコシが感じられる。

これは昔からそうだったか、麺が変わったのかわからないけど、うまい。強烈なスープに負けていない。

ネギ入れ放題も健在!

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▲ 卓上に置かれた小さくて清潔なザルから、ネギをたっぷりのせる。

というか、普通の人はネギでも入れないと、この濃厚ギトギトのラーメンを完食するのは難しいと思うんだ!

だからたっぷり入れる!ドサーッと!

昔は青いプラスチックのバカでかいザルに山盛りになっていたネギも、今はなんかこぢんまりと落ちついてしまった。

味は変わらないし、清潔になって喜ぶべきなのだが、なぜか切ない胸に風が吹いてた。

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▲ 何もしなくても強烈なのに、なぜ人はニンニクまで注入して自分を罰するのだろうか。

ただでさえ豚臭と油にまみれているというのに、さらに強烈なオイニーをかぶせて罪を拭おうというのか!

半ばやけ気味になってニンニクとブラックペッパーもドバババー!っと投入!

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▲ おおう!大量のネギのシャキシャキ感がハンパない!濃厚油脂スープにもっちり中太麺にシャキシャキネギがあいまって、

これは、

うまいじゃないかーーーーー!

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▲ まだまだ存在感のある背脂やスープや麺やネギが、抜群の相性を見せているのは間違いないが、マリアージュなどという小賢しい言葉は、このラーメンには似合わない。

後ろのカウンターに座っているじいさんのように、額の汗も拭わずに、ただひたすら食らえばいい。

それがホープ軒だ。理屈はいらない。

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▲ このスープを完汁する人はそうそういないだろう。

僕もいまだかつて飲み干したことはない。

代わりに背脂と豚骨出汁をたっぷりまとったシャキシャキネギを、レンゲでまとめて口に放りこむ!

永遠に続くかと思われるシャキシャキ感と、胃の底から上がってくる満足感が、そろそろ不快感に変わるんじゃねーかと心配になる頃、丼からネギも姿を消している。

数十年ぶりに相対したが、今回は引き分けだった。

勝ったとも言えないし、負けたとも言えない。

ただ、いい闘いだった、とだけ言っておこう。心からのありがとうを伝えたい。

ホープ軒は、いつまでもホープ軒

小学生くらいの頃は、たまに食べるといつも負けてました。

子どもにはあの背脂と豚骨スープは強烈すぎたのでしょう。いつも食べ終わるとちょっと気持ち悪くなってた。

高校生から二十代になると、心も身体も刺激を求めているのでホープ軒はドンピシャ!チャーシューメン大盛なんかをガツガツ食べて、常に圧勝。征服感に酔いしれたものです。

そして中年にさしかかった今、負けもせず勝ちもせず、ただ淡々と味わうことができるようになってきたのでしょうか。

ふと客席を眺めると、僕と同じような中年男性や、ほとんど白髪のおじいちゃんなんかが、やはり淡々と、勝ち負けを超越した顔で、テカテカの麺をすすっています。

丁寧に引いた出汁で作られた洗練とはほど遠いけれど、ホープ軒にはホープ軒にしかない味わいがあり、それは創業から50年以上経った現在も、多くの人に愛されているようです。

まだインターネットなんか発想すらなかった時代、「うまいラーメンはタクシーの運転手に聞け」と言われていた頃、このお店のまわりにはいつもタクシーが駐まっていました。

あの頃と同じように今も、タクシーの運転手さんの姿を見かけると、なんだかうれしいものです。

家帰ってから胃薬飲んだから、やっぱり負けかな?



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