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「映画ファンの集い」の先行試写で『愛を積むひと』を見てきました。

ロケ地は「日本で最も美しい村」連合第1号に認定された北海道美瑛町

夏に北海道ツーリングを予定している僕としては、その風景や街並みを見ることも楽しみだったのですが、それ以上に、夫婦や家族のあたたかい人間ドラマに涙が止まりませんでした

結婚している人、子どもがいる人、親がいる人、家族のある人は必見です!

みんな親から生まれてくるんだから、だいたいの人は必見と言うことです!

とくに娘がいるお父さん、そこの頑固なオヤジ、そう、あなた!あなたは劇場で見ましょう。泣いているところを見られたくないのなら。

妻に頼まれ、石塀を作りはじめる

無愛想な職人気質で、妻がいないと何もできない篤史(佐藤浩市)と、そんな夫にいつも明るい笑顔で寄り添う妻・良子(樋口可南子)は、どこにでもいるふつうの夫婦。

一見めんどくさい頑固オヤジと健気な妻に見えるんだけど、じつはしっかりバランスが取れてる。

アラフォーの僕なんかは、この夫婦が静かに幸せに暮らしている光景を見ているだけで、じんわりと胸が熱くなってくるわけです!

篤史は大自然に囲まれてのんびり暮らすつもりだったんだけど、ある日良子から庭に石塀を作ってほしいと頼まれ、しぶしぶながらも、毎日石を積み始める。

亡き妻から届きつづける手紙

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造園見習いのバイト青年・徹(野村周平)やその彼女・紗英(杉咲花)の手伝いもあり、順調に石を積んでいたのだが、ある日発作が起きて良子は帰らぬ人となってしまう。

落胆し、酒に溺れ、自暴自棄に陥る篤史のもとに、亡き妻から手紙が届き始める。

そこには、死を覚悟した良子が、残した家族に向けた愛と寛容が並んでいるのだった。

日本一美しい村『美瑛町』

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篤史たちが移り住んだのは、「日本で一番美しい村」北海道美瑛町。

『北の国から』で有名な富良野のすぐ近くにあり、どこまでも続く大草原の先には、大雪山・十勝連峰の雄大な山々を眺めることができます。夏にはラベンダーなどの花たちも咲き乱れ、そりゃあもう死ぬほど美しい。

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日本にもこんな場所があるのかよ!と酔いしれてしまうほど。

春夏の爽やかな風に揺れる草原や、秋の実り豊かな森の色彩、暗黒の冬の厳しさなど、美瑛の四季折々の様相を味わえるのも、本作の魅力のひとつです。

っていうか、今年の夏に自分がここへ行くのか、と思ったら、もう食いつくように見入ってしまいましたよ。

個人的には、大雪で電気が止まった家で、篤史と紗英の父親(柄本明)がお酒を飲むシーンが好きです。実際に雪に閉じこめられたら大変だろうけど、その光景はなぜかとてもあたたかい。

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どんないびつな石にも、役に立つ場所が必ずある。

篤史は東京に残してきた一人娘・聡子(北川景子)を心配しながらも、彼女が過去に犯したあやまちを許してあげることができない。

複雑な家庭に育った徹もまた、若さ故のあやまちを繰り返してしまう。

口べたな篤史は、石塀を積みながら徹に言います。

「小さくて割れた石とか、変わった形をした石とか、そういう石にも、塀を支えるのに役に立つ場所が必ずある。人だって、きっと同じだと思う」

これね、徹や聡子だけじゃなくて、僕やあなたや彼や彼女、みんなに言えること。声を大にして言いたい。

「僕らはみんな違うけど、僕らはただ、生きているだけで誰かの役に立ってるんです!」

金子みすゞの「みんな違って、みんないい」だよね。あなたはダメじゃない。まず自分が自分を信じてあげなくちゃ、誰が信じてくれるのよ!(って誰に言ってんだか笑)

柄本明が素晴らしすぎてかなわない!

紗英(杉咲花)の父親を演じた柄本明がすんばらしいです!

篤史とのぶっきらぼうな掛け合いが、とっても気持ちよくて、僕も歳をとったら、こういう気を使わない友人が近くにほしいなあと思いました。

彼がスクリーンに登場すると、さっきまで涙を啜る音が聞こえていた劇場に、いきなり大爆笑が起こるんです。

暗い部屋で切ない話をしていたと思ったら、唐突に笑わせるんだからたまりません。

逆に、馬鹿なことを言ってると思ったら、深い哀切が漂ってきたりして、またキュンとなるわけです。

妻に先立たれてからの篤史の日常は灰色でしたが、柄本明に出会ってから、すこし色彩を取りもどしたような気がします。

日本が誇るかけがえのない名優の一人です。

男は昔から女性にはかなわないんですよ

若い頃はバカちんだったので「女は三歩後ろを歩いてればいいんだよ」と本気で思ってましたが、歳をもらえばもらうほど、女性には絶対にかなわないわーと思うようになりました。

あなたの奥さんは、あなたが思っているよりずっと、あなたのことを知ってますよ。知った上で、黙って許してくれてるんですよ。

あなたがいい歳してうんこもらして、バレないようにパンツを外のゴミ捨て場に捨てたことも知ってるし(誰の話だw)、人前では強気なあなたが本当は虚勢を張ってる小心者だってことも知ってる。

きっと篤史も、死を目前にしてなお、残した人のことばかりを考えていた良子に「やっぱりかなわないあな」と思ったことでしょう。

地味で、静かだけど、本当に素敵な映画でした。

美瑛という町も、この作品の底に這うテーマによく似合っていた。

しばらくは、ナットキングコールの「スマイル」を聞くと、目頭が熱くなることでしょう。

ご夫婦で、あるいはあえて一人で、ゆっくり劇場でご覧になることをオススメします。6月20日(土)全国ロードショー。

*記事内の風景写真は、こちらのサイトからお借りしました。→ 北海道無料写真素材集 DO PHOTO

予告編

ノベライズと原作

愛を積むひと (小学館文庫)