人はいつのまにか恋をしなくなる。

結婚しているとか倫理がどうとかではなく、歳をとると若い頃のように身を焦がすような恋に落ちることは少なくなる。

傷つくのが怖いからだ。大人が切実な恋愛に破れるとその傷は自己否定を伴ってなかなか癒えない。

漫画『恋は雨上がりのように』は、傷を負った女子高校生と、傷つくのを恐れる中年男の物語だ。

17歳のあきらはバイト先のファミレスのうだつのあがらない店長に恋心を抱いている。彼女はまっすぐな気持ちをぶつけるも、中年の店長は一歩を踏み出せない。

「俺なんかのどこがいいの?」

「人を好きになるのに理由なんていりますか」

「夢も希望もなにもない。僕はカラッポの中年だ」

しきりに胸がしめつけられるのは…、その若さと純粋さ。

象徴的に描かれる爽やかな青空と雨のシーンに、少女と中年の心の揺れが重なっていく。物語は明るく軽妙に展開していくが、いつのまにか僕の胸は切なくてきゅっとなる。

誰もが通った眩しい季節と、誰もがいつか味わうほろ苦い追憶。

雨が降ると、傷がうずく。だからあの人に会いたい。

恋とはけっして傷の舐めあいではない。けれど恋は傷を癒やしてくれる。