僕らの世代にはトラウマとも言える、強烈なインパクトを残した大ヒットコミック『寄生獣』の実写映画。
原作が強すぎると映画版はことごとくポシャるもんだけど、すごく良かったですよ。
原作の大ファンとして、良かったところとか微妙だったところとか率直な感想、その他諸々記しておきます。ある程度の設定と展開は書くけど基本的にネタバレなし。
率直な感想
よくできてました。
山崎貴監督はかつて「SPACE BATTLESHIP ヤマト」という、これも超人気アニメの実写版でひどい汚点を残しているのでやや心配していたんだけど、今回はすごく良かったですよ!
キャラクターの設定や細かい場面など、原作と違う部分がけっこうあったけど、それはむしろいい変更点。
ドライでシニカルで無機的な印象の原作に、「ALWAYS 三丁目の夕日」や「永遠の0」などで知られる山崎監督得意の人間味や情が注入されて、原作を知らない人や女性たちにも楽しめる作品に仕上がっていると思います。
グロさは原作以上かもしれないけどね。実写だから。血がドバーッと出るし、いろいろぶっ飛ぶし。
染谷将太くんの存在感と他の俳優陣
正体不明の寄生生物に脳を乗っ取られて人間がバクバク喰われていく、なんていう奇抜な物語を現実に引き戻してくれるのは、なんといっても主演の染谷将太くん。
彼の卓越した演技力と独特の存在感がなかったら、この映画は陳腐でひどい有様になっていたでしょう。
主人公・新一を演じる染谷くんと、そのお母さんを演じる余貴美子さんのしっとりとしてリアルな日常の雰囲気があるから、突然出てくる血みどろの猟奇的シーンが際だつ。
ヒロイン・里美を演じる橋本愛ちゃんはやっぱり輝いていて、男の子だったら誰でも憧れちゃうかわいらしさと、新一との微妙な関係性に心がわぎわぎしちゃいます。
深津絵里はキャスト発表のときから違和感があったけど、やっぱり違う。
イメージも違うし、演技も下手。ていうか、あの田宮良子という役はかなり難しくて、あれを完璧に演じられる俳優さんがいるんだろうかって感じだけど。
「私一生懸命パラサイト演じてます!」っていう気持ちだけ伝わってきて、深津さん好きなだけに切なくなっちゃった。
それに比べて、こいつ本当にパラサイトなんじゃねえの?と思ったくらいハマっていたのが、東出昌大くんと池内万作。気色悪くて最高です。
パラサイト流れで考えると、後編に出てくるらしいピエール瀧に期待大!そのまんま演技なしでいけるんじゃないですか(笑)。
ミギー役の阿部サダヲちゃんは、やりすぎを心配してたけど、うまい具合に自分を抑えていて及第点。
國村隼さんの落ちついた存在感が、作品をきりりと締めてくれています。
原作ファンの皆さんへ
衝撃的なほどの原作コミックの熱烈なファンの中には、山崎監督の実写映画版に不満が残る人もいるかと思います。
僕だって完全に満足してるわけじゃない。
ミギーの超合理的で情のカケラもないドライな考え方はあまり描かれていないし、原作のあの殺伐とした雰囲気も消えちゃってる。
原作の根底にあるテーマが深くて重いから、もっとじっくり話を進めてもいいのに、と思ったりもした。
でも、それでも、これはこれで充分楽しめる作品に仕上がってると思います。
だってあの原作の世界観を実写で完璧に再現するのってムリじゃね?
デヴィッド・リンチとかデヴィッド・フィンチャーのような監督に、もっとシリアスで暗鬱とした世界観を作らせることもできたかもしれないけど、それだとブラックなホラーになっちゃって違うでしょ?
ちょいちょい違うところはあっても、映画としてはこれでよかったと思いますよ僕は。
キャッチコピーに「日常は、ある日とつぜん、食べられた」とあるように、僕らの生活の延長線上に、この物語を置きたかったんじゃないでしょうか。
突飛な物語だけど、真剣に人間という不自然な存在について考えさせるためにも。
まとめ「完結編が超楽しみ!」
最近流行りの2部構成で、完結編は来年のGWに公開されるんだけど、そこへの繋ぎというか期待の持たせ方もうまくやってました。
本作ではほとんど出演していない北村一輝や大森南朋、浅野忠信といった大物たちが話の軸となって、よりアクションと展開が大きく動きそうです。
最終的にあの原作の衝撃的な結末がどのように描かれるかで、この映画の善し悪しは決まってしまうと思うので、完結編が本当に楽しみになってきた!
本作を見るかぎりでは、結末に向けた伏線がしっかり張られているのが見受けられるので、期待していいと思います。80点。
予告編
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