フレーム 25 05 2019 12 41 21

四月にオートバイが納車されたので、すこし長く走ってみたくなって、伊豆下田まで足を伸ばしてきた。

本当は本格的な猛暑になる前に信州や北陸、東北あたりを走りまわりたいのだが、慣らし運転が終わらないことにはなんとも心もとなく、まずは走り慣れた伊豆半島で距離を稼ごうという算段である。

五月二十三日。快晴。気温二十三度。絶好のツーリング日和。往路はひたすら海岸線。国道一三四号線から西湘バイパス、一三五号線、熱海ビーチラインを抜けて、半島の先端を目指す。

観光的にはノープランだったのだが、出立直前に、せっかくだから湯河原の有名ラーメン店へ寄ってみようと思い立ち、iPhoneのカーナビをセットする。

まえに情熱大陸かなんかで特集を見て、ぜひ一度食べたいと思っていた店なのだが、なにしろ超のつく人気店で、早朝から整理券を配布しているらしく、それでもまあ平日だし運がよければ食べられるかもしれないと、薄い期待を抱きつつアクセルを開いた。

R0021971

開店時刻を三十分過ぎたころに到着。平日だが当然のごとく長蛇の列。待合所の看板にはすでに「本日の受付は終了しました」の文字。ふむ。やはり無理か。

店の前で並んでいる人に訊いてみると、なんと午前三時半から並んで、早朝に整理券をもらって、今から食べるそうである。思わず声をあげて笑ってしまった。

あとで聞いたところによると、この店は近々ラーメンの味を変える予定があるそうで、その前に今の味を食べておこうと全国のラーメンファンが殺到しているらしい。

こんなにも人気では一生食べられる気がしないが、とりあえず駐車場のチェックだけして、先を急ぐ。

ここからすぐに海岸線を抜ける〈熱海ビーチライン〉に差しかかるので、GoProを首にかけて走行動画を撮る。

☞ GoProは首っかけ。

フレーム 24 05 2019 06 13 21

過日に真鶴半島へ出かけたときに初めて走行動画を撮ってみたのだけれど、これメチャクチャ楽しいね。YouTubeで他人さまの動画を観るのも楽しいけれど、自分で走った動画はその何倍も楽しい。

自分で走った道なので、ガッツリ追体験できるんだ。なるほどこれなら、家の大きなテレビで疑似ツーリングしながらビールがうまいや。

追体験のコツは、なるべくオートバイやハンドル、自分の手が見えるように撮影することだと思うよ。そうしておくと、同じ道を走っている気分になれる。景色だけだと、景色だけだから、つまらない。

YouTubeにあげてもいいんだけど、やっぱりこれって、自分で走ったことのある者だけが楽しめるおまけみたいなものなんだ。

フレーム 24 05 2019 06 10 05

せっかくオートバイにETCを付けたんだけど、〈熱海ビーチライン〉の料金所は非対応。料金所のおじさんによれば、つい三十分前までは波が高くてオートバイは走行禁止になっていたそう。ここはもろに波が道路にかぶるからね。

平日なのでガラガラに空いてる熱海市街を抜け、網代、宇佐美と、交通量はあるものの流れているので、快適に走る。急ぐ旅ではないので、観光バスについてのんびり走るのもわるくない。

フレーム 24 05 2019 06 22 37

〈飯田商店〉にフラれたので、お昼は伊東の道の駅へ。ヨットハーバーで愛車の写真を幾枚も撮る。

R0021982

近くにいたライダーのおじさんに写真を撮ってもらったんだけど、他人様に撮ってもらうとどうしても表情やポーズが硬いな。笑える。

R0021984

伊東を出ると、一三五号線から外れて川奈の海沿いを流し、ふたたび一三五に戻る。ぐらんぱる公園や伊豆高原の辺りは夏には大混雑の道だが、今くらいの季節ならまだすいすい流れて気持ちいい。

やがて海沿いの峠を越えると、ちいさな岬が見えてくる。ジブリ映画に出てきそうな、エーゲ海にでも浮かんでいそうなその岬の森と街並みに、いつもここを走るときは心が躍る。GoPro動画のなかの僕も歓声をあげている。

フレーム 25 05 2019 12 37 13

思わずステアリングを切り、岬へ。伊豆稲取の駅前を抜け、港を流し、ギアを二速に落として、狭く急勾配の生活道路を登っていく。オートバイならではの寄り道に、少年みたいにわくわくしてくる。

フレーム 25 05 2019 12 38 37

R0021996

峠から眺めた岬はジブリのように幻想的な非現実感を帯びていたが、実際に走ってみれば、そこにあるのは、僕らと同じ住民たちの昨日から明日へ繋がる淡々とした生活と、閑散期の観光地のひっそりとした佇まいだった。あたりまえだが、どこにだって、そこに住む者の生々しい暮らしがある。

R0021990

フレーム 25 05 2019 12 54 14

さらに一三五号を下り、また峠を登ると、やがて前方に下田の白浜海岸が見えてくる。

フレーム 25 05 2019 01 41 21

ここにある〈尾ヶ崎ウィング〉というパーキングからの眺望はなかなかなので、ちょいと一息。トイレによって、水を飲んで、ドゥカティの硬いシートに痛んだ尻の肉を休ませる。ここまできたら、もう着いたようなもんだ。

R0022006

R0022007

R0022002

フレーム 25 05 2019 01 45 35

この日は波があったので、サーファーたちの顔がみんな輝いてた。天気がよく、海水は透き通っていて、人もすくないし、たまんねえだろうな。

R0022016

……つづく。☞ 下田の街。石畳に香るジャスミンに誘われて。