最近、〈バガボンド〉ばっかり読んでます。
いつ頃からか、心が弱ったときや、人生に迷ったとき、気づいたら〈バガボンド〉を読んでいることが多いんです。
もう、何十回と読んでいるのに、読み返すたびに新たな発見と感動があって、ときに涙しながらも希望をもらうのは、未熟な私が少しずつ人生を学んでいるということなのかもしれません。
一人で武者修行の旅をする武蔵が、郷里に残してきた幼なじみのおつうのことを思い出して、__さびしい、とうなだれる場面があります。
いつも強気で、天下無双を目指す武蔵が、深い森の中、満点の星空の下で、身を縮めて、さびしさをかみしめている。
__あれ、こんなシーン、あったかな?
もう本当に何十回と読んできたのに、その場面には記憶がなかった。私はそれに気づいて、涙を流していました。
__ああ、さびしいって、こういうことなのか。
これまで人と運命に恵まれていた私は、本当にさびしい、ということを知らなかったのかもしれません。だから、武蔵がさびしさを噛み締める場面が記憶に残らなかった。
武蔵は、__俺には、お前だけだったんだ、と気づき、__おつうをどうか幸せに、と手を合わせ祈ります。
一緒にいることはできないけれど、どうか幸せに生きていてほしい。
そして、弟子の城太郎に「その女がいるから生きたいと思う。強くなろうな」と言い、決意を固くする。
私も今、生きる希望を見失いそうになることがあるけれど、大切な人たちがいるから、生きたいと思う。強くありたいと思う。
__一緒にいることはできないけれど、どうか幸せに生きていてほしい、と。
そんなことを思いながら、なかなか降りやまない冷たい春の雨を、アンと二人で眺めています。
明日は晴れるといいね。そしたら、海へいこう。