人は、やいのやいの言うよ。そういうもんだよ。

俺の、あなたのためを思って、こうしたほうがいいよ、それはやめたほうがいいよ、それは間違ってるよ、何やってんの、違うよ、馬鹿じゃないのって……。

人が物事を理解するのには、どうしても〈時間差〉があるもの。

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惣一郎さんのじいさんも、響子さんの両親も、亡くなった旦那のことはもう忘れて、再婚して、幸せになれって言う。やいのやいの。

まわりの人は、まだ哀しみと混乱から抜けだせない若き未亡人を支えようと、やさしくしてくれているんだけど、それは素敵なことだけれど、大切なのは本人の気持ち。

「自分がどうしたらいいのかわかるまで……惣一郎さんの姓を名乗っていたいんです」

それでいい。理屈ではない。間違っていたとしても、そうしたいんだもの。自分の人生だもの。

響子さんって、こう見えて真ん中に強い芯がある。本気で両親と大喧嘩する。うるさいって。頑固って、まわりが勝手に使う言葉だ。生きるって、理屈ではないもの。間違って、生きていこう。