「パパ、僕も『重力ピエロ』読んだよ」
僕と家内が映画の話をしていると、中二の長男が言った。
僕は彼が小説を読んでいるところを見たことがなかったので、すこし驚いた。
話を聞いてみると、話の筋やディテールをすらすら話すので、どうやら本当に伊坂幸太郎の小説を読んだみたいだ。
「パパは映画を観ただけで、まだ原作は読んでいないんだよ」と言うと、「映画では春の役はどういう人なの?」と訊いてくるので、僕はうろ覚えの記憶を頼りに、原作と映画の違いを彼とすりあわせていく。
中学二年生の男の子が伊坂幸太郎を読むことは、ちっともおかしなことじゃないのだろう。
けれど彼とそういう話をしたことがなかったので(彼と僕の会話の八割はサッカーの話だ)、とても不思議な気分だった。
あらゆる物語は家族を描いている、と言うけれど、『重力ピエロ』はまさにそのまま、血の繋がりが重いテーマとなって描かれている。
残酷な出生の秘密、レイプや性犯罪、血の繋がりと過ごした時間、母親の死、癌という病い。
『重力ピエロ』に出てくる題材のいくつかは、父親である僕がこれまで教えてこなかったものばかりだ。
彼がそういうものを読んで、知って、何をどう考えているのかはわからないけど、僕は彼をとても頼もしく感じるのだった。
僕だって彼くらいの年齢の頃は、毎日の退屈な日常では知り得ない、味わえないものを求めて、親父の本棚から小説を無断で持ち出したものだから。
世の中は矛盾と不条理で溢れている。
毎日のように誰かが殺されて、今もどこかで誰かが泣いているだろう。
僕ら家族はテレビのニュースを見ないので、陰惨な事件を知ることはほとんどないけれど、長男には、どんどん僕の本棚をあさってほしいと思う。
僕が口で教えることのない、世界のありようを、小説や漫画、映画から学んでほしい。
残酷な運命や人類の愚かさを、具体的な物語の中からたくさん知って、憤りに唇を噛んで、心を痛めて、その上で、前を向いて生きてほしい。
そんなことを思った。知らぬ間に、子どもは大きくなるものだ。
2014年1月21日午後7時29分。リビングのソファにて。テレビに映るタコを食べようとするカワウソに釘付けのチビたちの隣で。今日もめいっぱい生きた。ありがとう。
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