作家・村上春樹さんが読者の質問に答える期間限定サイト「村上さんのところ」が、1月15日(木)午後よりスタートするそうです。
ノーベル賞にもっとも近いと言われる世界的文豪で、最近は出せば出すだけ小説が売れちゃう、雲の上の人みたいになってきちゃった春樹さんだけど、じつはけっこう早い頃から、ネットで頻繁に読者との交流をしてきてるんですよね。
古くは1990年代までさかのぼりますが、僕が一番好きなのは、やたらとタイトルの長いこの本。
今から14年前にホームページ上のメールのやり取りをまとめて刊行した本で、もうそれこそ何度も何度も読み返してます。トイレで用を足しながらパラパラめくるのにちょうどいいんですよねこれ。
小説に通ずるような深い質問もあれば、くだらなくて馬鹿げた質問もあれば、ちょっとエッチな質問もあって、それらに対して春樹さんもまた、丁寧に答えたりてきとうにやっつけたりしてます。
肩の力を抜いて読めるんだけど、なるほど、とうなってしまうことがかなり多くて、はっきり言って小説よりずっとおもしろいと僕は思ってます。Kindle版出ないかなあ。
- 「全裸の女性がベランダに出てきたら?」
- 「蕎麦屋で日本酒を飲むコツを教えてください」
- 「羊男は人間か羊か」
- 「『ガルツ』とはどんな料理?」
- 「無人島に持っていくCDは?」
- 「男の子のやさしさと男のやさしさの違いは?」
- 「ゴルゴ13がセックスでイッてない理由は?」
なんていうバラバラの質問が282コもあるんだけど、僕が一番好きなのは「この世で一番好きな食べ物は?」という質問に対する答えです。
仕事が一段落して「ああ、腹減った」と思います。でも冷蔵庫には何もない。しょうがないから自転車に乗って近所の肉屋に行きます。そこでコロッケがかりかりっとキツネ色に揚げられるのを待って、それをひとつ買います。となりのパン屋ではちょうど食パンが焼き上がったばかりだったので、それを少し厚めにスライスしてもらいます。三軒先のスーパーで小さいトンカツ・ソースを買って、パンにはさんだコロッケの上にしょっしょっとかけます。近所の公園のベンチに座って、「ふー、あつあつ」とそれを食べます。以上。
思わずうなってしまうような深い言葉もたくさんあるんだけど、小説とは一風違う庶民的であたたかいエピソードにまたほっこりするんです。
というか、この本にかぎらず、僕の価値観や生きる指針の半分は、春樹さんのエッセイの影響を受けているんだな、と再確認しました。残りの半分は中島らもと花村萬月のエッセイだったりするんだけど。
ともあれ、春樹さんに質問をぶつける機会というのはそう多くはないと思うので、この機会を逃さずあなたの思いをぶつけてみてはいかがでしょうか。
きっと書籍化されるでしょうから、春樹さんの本に載るチャンスですよ。さあて、僕は何を相談しようかしら。
ところで春樹ファンの皆さんは、もちろんガルツってどんな料理か知ってますよね?