コラム/エッセイ

『深夜食堂』の切ないけれど他人事な24分。

さて、寝るにはまだ早いし、かといって洗濯物をたたんだり本を読んだりするほどの気力はない、というとき、最近はhuluで『深夜食堂』というドラマを見ることが多い。

「一日が終わり、人々が家路へと急ぐころ、俺の一日ははじまる。メニューはこれだけ(豚汁定食とビールと日本酒)。後は勝手に注文してくれりゃあ、できるもんならつくるよってのが、俺の営業方針さ。

営業時間は夜十二時から、朝七時頃まで。人は「深夜食堂」って言ってるよ。客が来るかって?それがけっこう来るんだよ」

っていうナレーションではじまる深夜ドラマで、小林薫が新宿ゴールデン街の小さな「めしや」の主人をやってる。

場末のさびれた食堂が舞台ってことで、いろいろワケありの客がやってきて、それぞれのドラマを見せてくれるっていうありがちな展開なんだけど、なんか見ちゃうんだよな。

劇的な感動をもたらしてくれるわけじゃないけど、つい引きこまれてしまうのは、このドラマが24分という短い尺なんだからだと思う。

そこで描かれるごく平凡な人々の人生のドラマは、本人にとっては痛く切ないものだけれど、でもやっぱりそれは他人事だ。

人間関係が希薄な現代だから、とかいうわけじゃなくて、いつの時代でも、他人の痛みは他人のもので、俺はちっとも痛くない。

無口な主人が余計なことを口ばしらないように、同情はするけど他人の人生に深くは踏みこまないってのが、切ないけれど大人ってやつらしい。俺もそれは最近実感する。

このドラマを見ていると、ぼんやりとした切なさと痛みを味わうけれど、俺の人生にはなんら影響がない。建設的な感慨や意欲をもたらしてくれるわけじゃない。

でもそういう時間が、乾いた人生にちょっとだけ潤いをもたらしてくれるような気がする。見知らぬ他人の泣いたり笑ったりが、なぜか俺を元気にしてくれる。

人と関わるとちょっと心があったかくなるけど、それはほんの一瞬。だから、24分という絶妙な尺がよく合うんだ。

そんな深夜食堂だけど、現在映画版が公開中。お湯でのばした豚汁みたいに、長尺になって旨味が薄まらなければいいのだけれど。

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映画予告編

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