コラム/エッセイ

山崎まさよしの「中華料理」という曲が好きだった。[ 日刊CL*84 ] 2014/04/15

のれん
のれん / sabamiso

山崎まさよしの「中華料理」は、片想いを寄せた女の子にもっと近づきたいんだけど、できれば街の中華料理屋さんみたいな肩肘のはらないお店で一緒にいたい、っていう、ちょっと変わったラブソングだ。

日本の良き街には、古くからある小ぢんまりとした中華料理屋さんが必要不可欠なのだ。

僕はこれまでに、いくつかの街に住んできたけれど、いつも近所に美味しい中華料理屋さんがあった。

七年間もの青春時代を捧げた学芸大学駅には、夫婦で営むとても小さな中華料理屋さんがあって、僕は休日の昼間にそこで定食を食べるのを楽しみにしていた。

夕方になると、主人はいつもカウンターに日本酒の一升瓶をドン!と置いて、コップでお酒をあおりながら、テレビで野球中継を眺めていた。

ここのラーメンは、昔ながらの透き通った鶏がらスープに、ちぢれたたまご麺とメンマとほうれん草だけのシンプルなもので、僕は気だるい夏の夕方に、野球を見ながら瓶ビールを飲んで、必ずそのラーメンを食べた。

今思い返すと不思議なんだけど、僕はあの店に女の子を連れて行ったことがない。男友だちも連れて行っていないはずだ。

あそこだけは、僕一人だけの場所にしておきたかったのかもしれない。

他にも、僕がある一定の時間を過ごした町には、必ず昔からある古き良き中華屋さんがあったものだが、残念ながら、今住んでいる街には、そういうところを見つけていない。

きっと僕の知らない路地裏に、常連さんがたむろする小ぢんまりとしたお店があるんだろうけど、僕はもうその店にたどり着けないような気がする。

昔ほどいろんな場所を歩き回る時間がないし、ああいうお店っていうのは、漠然とした将来への不安を抱えた、独り暮らしの大学生みたいなモラトリアムの年頃にこそ、輝いて見えるんだと思うし、そういう「男の子」にこそ、必要な場所なんだろう。

それより今は、家族や気のおけない友人と、わいわい笑いころげて楽しめる中華屋さんへ行きたい。

いつの時代にも、そういう輝いたお店ってあって、中華料理って、やっぱりなんだか素敵だ。

2014年4月15日。午後7時08分。春風が吹きこむ書斎にて。目黒川で二胡を聞きたいなあ。

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