ひさしぶりに買ったその日に読破した本。
湘南T-SITEのソファでほうじ茶飲みながら読んでたんですが、あまりにおもしろくて仕事なんかなーんもしないで読みふけって、けっきょく買って帰ってきてその日のうちに読み終わっちゃいましたよ。
みうらじゅんさんて「イラストレーターなど」って名乗ってるらしいんですけど、たしかに何やってる人なのかよくわからない。
と思ったら「ない仕事」をやってたんですね。
僕もブログを書いて生きていますが、個人で情報発信をしている人には、ぜひ読んでもらいたい珠玉の1冊です。
ちなみにちょいちょい笑えるところがあるので気をつけましょう!僕はスタバで吹いて何度も変な目で見られました(笑)
みうらじゅんさんって思ってたよりスゴかった!
みうらじゅんさんてよく知らなかったんです。
タモリ倶楽部とかの脱力系番組で見かける仏像好きのロン毛のおじさん?くらいの認識で。
でもこの本を最後まで読むと、これまで様々なブームを世間に巻き起こしてきたのがわかります。
代表的なものを挙げるだけでも、
- ダサくて失笑ものだった地方のマスコットを「ゆるキャラ」と名づけて、イベントやメディアで発信しまくって国民レベルにまで流行らせた
- 「マイブーム」という言葉を作り、ついに広辞苑にまで掲載された
- 吉本新喜劇がなくなってしまいそうなくらい衰退してたときに、自分が欲しいからという理由で『吉本新喜劇ギャグ100連発』というビデオを企画し、東京でも人気が出た
- チャールズ・ブロンソンの企画CDを作ったら、タランティーノが2枚買ってくれて1枚をブロンソンの娘さんにプレゼントしてくれた
- 映画のエンディングテーマとしては世界で初めて、ボブ・ディラン本人が楽曲の使用許可を出してくれた
- 仏像ブームを起こし、「阿修羅展」の異常人気をつくる。仏像大使にも選ばれた。
などなど、他にも小説をヒットさせたりそれが映画化されたり、たくさんの功績を残しています。
いとうせいこうさんと仏像を見てまわる「見仏記」シリーズの1冊目は現在36冊というロングセラーでDVDもたくさん出てるし。
僕が無知だっただけかもしれないけど、僕らがふだん「すごい!」「カッコイイ!」「成功してる!」と思っている人とか物事って、本当に氷山の一角なんだなあと思いました。
流行っているものではなく「マイブーム」を流行らせる天才
みうらじゅんさんといえば、誰も興味を示さないようなマニアックなものを収集して楽しむ「マイブーム」の人。
流行っているものではなく、みんながまだ気づいていないけど絶対楽しめる「おもしろいもの」を見つけてきて、それを世間に広める人。
つまり「自分の好きなもの」を人に伝えて、それが仕事になっちゃってる!なんて素敵な人生!
収集しただけではただのコレクターです。それを書籍やイベントに昇華させて、初めて「仕事」になります。
ネーミングでマイナスをプラスに変える
おもしろいものを見つけて、好きになったら、次はそれを広めるわけですが、そこで大事になるのが「ネーミング」。
- 「もらったら絶対イヤだな」というお土産…「いやげもの」
- 失笑を隠せないおかしな奇祭…「とんまつり」
- 真剣に作ってるんだけど結果的にゆるゆるなキャラクター…「ゆるキャラ」
とかですね。
名前をつけてあげるだけで、今までだったらイヤだったものやバカにしていたことがひとつのジャンルになって、みんなで楽しめるようになるんですね。
重い言葉をポップにする
あとは、何にでも言葉の終わりに「ブーム」か「プレイ」をつけることで、重い言葉をポップにするという手法。
- 失恋したら悲しいけど、落ち込んでる自分を「失恋プレイ」と呼んでみたら、ちょっと気持ちが楽になる。
- 童貞をこじらせてる自分を「童貞ブーム」と呼んでみたら、自分だけじゃないよなって気が楽になる。
- 「親孝行プレイ」と呼んでみたら、重い親子関係にとらわれずに気軽に親孝行できる。
ちょっとおマヌケな印象を与えるだけで、マイナスがプラスになるんですね。
「マイブーム」を「一人電通」によって広めたその手法
みうらじゅんさんは、自分が好きなもの・絶対流行るだろうというものを見つける天才ですが、最初はやっぱり理解されないそうです。
だから、自分で企画を立てて、自分で集めて、自分でネタを考えて、自分で発表の場所や方法を考えて、接待までする。
こういう一連の流れを全部自分でやるので「一人電通」と呼んでるそうです(博報堂の人と仕事するときは一人博報堂と呼ぶらしいですが笑)。
発信する場所やツールにこだわらない!
「一人電通」の目的は、自分のマイブームを本当に流行らせることですから、手を変え品を変えいろんなツールで発信していきます。
雑誌に企画を持ちこんで、ダメだったらイベントをやってみたり、マンガにしたりイラストにしたりエッセイにしたり、あらゆる手段で発信する。
これを読んで、僕はなんて小さなところで動いていたんだろうと驚きました。
僕の情報発信の場は、ほとんどこのブログだけですが、そんな自分の「場」にこだわる必要はないわけで、発信したいものがいちばん目立つ場、いちばん受け取られる場に、どんどん出て行けばいいんですよね。
雑誌に売り込む・専門サイトに売り込む・専門ブログに寄稿する、などなど、媒体は無限にあるわけで、そこに自分だけの「マイブーム」を売り込めばいいのです。
僕は今「シネマズ by 松竹」という映画サイトで連載コラムをやらせてもらっていますが、そこで書いている映画に関わる人生論とか心のことって、僕のブログに書くよりずっと読まれると思うんですよね。
他媒体のコラムだけじゃなくて、動画のほうが伝わること、イラストのほうが伝わること、写真のほうが伝わること、というふうに、自分が発信したいものの種類に合わせて、ツールを自由に選べばいい。そしてそれが個人で簡単にできる時代になっている。
これは個人的に目から鱗でした。
自分のブログを成長させるのが得意な人は良いけど、そういうのメンドクセーとかヘタな人は、他の適した「場所」を見つければいいだけですよね。
「自分探し」ではなく「自分なくし」
僕がこの本で最も感銘を受けたのが、”「私が」で考えない〜自分なくしの旅” という章でした。
何かを伝えたい、広めたいと思うときに、一番邪魔をするのが「私が」という自己主張です。
海女の魅力を伝えたい、仏像のすばらしさを広めたいと思っているのに、主語が「私が」で動いてしまうと、他人には本当に鬱陶しいだけなんですね。
これは本当に耳が痛い。
僕なんかブログの名前が「茅ヶ崎の竜さん」ですからね。もうそれだけで主張いっぱいでお腹いっぱいなのに、出たがりだから自分の写真を多用して、自分の考えばかり主張して、ゲップ出ますよ(笑)。
みうらじゅんさんくらい主張のある強烈なキャラですら、自分を抑えて、伝えたい対象物を主語に置いてるんですから。
というか、そういう伝えたいことが、その人のキャラクターになっていくんですよね。
「自分探し」をしても、何にもならないのです。そんなことをしているひまがあるのなら、徐々に自分のボンノウを消していき、「自分なくし」をするほうが大切です。自分をなくして初めて、何かが見つかるのです。
お金がほしい!スゴイと思われたい!っていうボンノウがあるうちは、伝わらないってことですね。
才能が足りなかったら、得意な人とチームを組めばいい
ということで、自己主張を抑えて、好きなものをいろんなツールと場所で発信していこうという話なんですが、みうらじゅんさんは
「最終的に面白いことが完成するのなら、すべてを自分でやる必要はない」
と言います。
好きな才能と広める才能のどちらかがうまくいかなければ、得意な人とチームを組めばいい。
ホリエモンならアウトソーシングすればいいだけ!と言うところでしょうけど、そこまでビジネスライクじゃないにしても、きっと自分の好きなものに追随してくれる人がいるはずで、そういう人の中から苦手なことをやってくれる人を探せばいい。
ここでも「私が」という自己主張があると、独りよがりになっちゃうってことがわかりますね。
まとめ「そこがいいんじゃない!」
長くなっちゃうけど、個人的に学んだことをまとめると
- ゆるくてダサいネーミングで、広く知らなかった人たちに伝える
- 自己主張を捨てて、伝えたいことがどうやったら伝わるか?を最優先する
- 伝える場所やツールにこだわらない
- 苦手なところは誰かと一緒にやる
というところでしょうか。
あとおもしろかったのが、みうらじゅんさんくらいでも「これ本当に流行るかな?」とか「つまんないんじゃないかな?」と不安になることがあるそうで、でもそういうときは、かぶせるように
「そこがいいんじゃない!」
って思うようにしているそうです。
なんかみうらさんが机に乗り出してそう叫んでいる姿が想像できますよね(笑)。
流行らそうとしてまったく浸透してない言葉やものもたくさんあるそうです。
けっきょくは「好き」がスタートですからね。そういう中から、国民レベルにまで流行る大ヒットが生まれるんでしょう。
ダメでもいいじゃない。おかしくてもいいじゃない。つまんなくてもいいじゃない。そこがいいんじゃない!