今年はどんな映画見たっけな?と思って、自分のブログとか「シネマズby松竹」に書いた記事とかNETFLIX、Amazonビデオの履歴なんかを覗いてみたんだけど、まあ今年も知らぬ間にアホみたいに映画見てますねえしかし。
ということで2016年版竜さん的映画ランキングを発表しようと思うんだけど、じつはそのうち半分くらいは2016年の作品じゃありません笑。昨今はNETFLIXやhuluなんかの映像配信サービスが隆盛なおかげで旧作に触れる機会も増えましたから、2016年に公開された作品じゃなくて、2016年にぼくが見て感動して素晴らしかったと涙した作品のベスト10ですので悪しからず。
NETFLIXとかAmazonプライムにある作品も多いので、年末年始の参考にもどうぞ。
<10位>「エイリアン」シリーズ
今年は歴史に名を残す名作をたくさん見たいなあとか考えていたら、何を思ったのかまず思い出したのが「エイリアン」シリーズだったんだけど、それは決して間違いじゃありませんでした。
第1作は1979年、今年41歳のぼくが4歳の頃の作品なので、さすがにSFとしての設定なんかは古いんだけど、エイリアンの造形とか演出とか、今見てもまったく色褪せてなくて驚きました。今はもうスターウォーズとかどこがCGなのかまったくわからないレベルだけど、逆に言うと映画全体がCGっぽくて、やたら綺麗すぎてのっぺりとした映像なんですよね。CGのないエイリアンはひどく生々しくて、ぼくらが今日生きている現実につながっているような恐怖がちゃんとあるんですね。未だにアナログレコードを聴くとえもいわれぬ感動が湧いてくるのと同じで、デジタルと人はまだまだ完全には相容れないことがよくわかります。
そしてシリーズ通して見てみると、豪華な監督の顔ぶれにも驚きます。第1作はリドリー・スコット。代表作がまさにこの「エイリアン」ですが、他にも「グラディエーター」や「ブレードランナー」、最近なら「オデッセイ」とか「ブラックホーク・ダウン」とかを撮ってる、いわゆるハリウッドの巨匠の一人です。
続いて「エイリアン2」は泣く子も黙るジェームズ・キャメロン。「ターミネーター」シリーズ、「タイタニック」「アバター」と世界の興行収入トップ10にいくつも顔を出す超売れっ子監督。スピルバーグとかルーカスがよく巨匠とか言われるけど、「世界で最も見られている」という意味でハリウッドの本当の巨匠はこの人ですよね。
これだけ大物が続いた次、「エイリアン3」は出ましたデヴィッド・フィンチャー。またしても超大物。「セブン」や「ファイト・クラブ」「ソーシャル・ネットワーク」に、最近なら「ゴーン・ガール」と、独特の暗い世界観のシリアスものが得意なフィンチャーがまさかのエイリアン。今も最もクールな監督の一人です。
こんだけ大物が続いちゃったら次どうすんのよと思ったら、「エイリアン4」に呼ばれたのはまさかのジャン・ピエール・ジュネ!「デリカテッセン」や「アメリ」を撮ったフランスの鬼才です。「アメリ」ですよ!モンマルトルで生まれ育ったちょっと風変わりな女の子を描いたキュートでスタイリッシュでお洒落なおとぎ話みたいなアメリを撮ったジュネがエイリアン!そんでジュネ版エイリアンはちゃんとアメリ的な可愛らしさがあるのがびっくりなんですよ。
2017年にはリドリー・スコットによる最新作「エイリアン:コヴナント」が公開されるようで、楽しみですね。。
<9位> 恋のロンドン狂騒曲
今年ぼくの中でウディ・アレン熱が再燃したきっかけとなった作品。相変わらず邦題はおバカですが、原題は「You will meet a tall dark stranger」で、占い師の常套句「近いうちに素敵な男性が現れるでしょう」なんだって。大人たちののっぴきならない恋愛を描きながら、占いとかスピリチュアルにハマる人とひたすら現実的な人の対比がおもしろい。皮肉屋のリアリストであるウディ・アレンが、なんだかんだ占いとかスピとか信じちゃった方が幸せになるんじゃね?というアンサーだったのが興味深かったですね。いつものように音楽もロンドンの街並みの切り取り方もお洒落で、キャラクターの人間臭さも最高です。
<8位> マッチポイント
以前スカーレット・ヨハンソンの不倫ものと聞いてエロいジャケット写真に下心丸出しで見はじめたものの、なんか思ってたのと違うな、と途中で見るのをやめてたんだけど、ウディ・アレン監督作だと知ってあらためて見てみたら楽しかった!
テニスのマッチポイントでボールがネットギリギリにポンと当たったとき、そのボールがネットの向こう側に落ちるか、こちら側に落ちるかというちょっとした違いで、運命は大きく変わる、というのを人生に当てはめた抜群の脚本で、今見たら脚本賞でオスカーにノミネートされてますね。
女を取るか金と将来を取るか。どっちも欲しいのが人間の本音。さてどうする?アレンらしい皮肉を味わいながら、官能的なスカヨハとの不倫願望を満たしつつ(雨の中での♡シーンは圧巻笑)、筋書きでたっぷり楽しめる秀作です。
<7位> ウルフ・オブ・ウォール・ストリート
おそらく世界で最も短期間に最もたくさんの金を稼いで、最もドラッグと女とやりまくって、最もエキサイティングな時間を生きて、最も上下の波の激しかった怪物みたいな人の記録でもあります。ウルフなんて生ぬるい、モンスター・オブ・ウォール・ストリートじゃないでしょうか。マーゴット・ロビーに蹴られたい人もぜひ見てください。
<6位> アイアムアヒーロー
漫画の実写化というのはあの巨人を例に出すまでもなくトホホな仕上がりが多いのは織りこみずみなので、原作の大ファンであるぼくも、とりあえず見ておくか、くらいの気持ちだったんだけど、すっかり騙されました。
ピンクと白を基調としたポップなポスターに、大泉洋さん、有村架純ちゃん、長澤まさみちゃんという今をときめく俳優陣の存在で、実写化作品にありがちな大衆受けする感じなのかと思ったら、超グロ!血まみれ!脳みそブシャー!今までそれこそ膨大な数のゾンビ映画を見てきましたけれども、こんなに血が出まくる作品もないんじゃないでしょうかね。
『君の名は。』が大衆に寄って成功したのだとすれば、『アイアムアヒーロー』は大衆を見事に騙して大喜び、というイカした作品でしょう。いつもツイッターで下ネタばかり投下している原作者・花沢健吾さんのしてやったり顔が目に浮かびます。
<5位> ミッドナイト・イン・パリ
真夜中のパリを徘徊していたら1920年代にタイムリープして、過去の大芸術家たち、ピカソとかダリとかヘミングウェイとかフィッツジェラルドに会っちゃうお話なんだけど、そこはタイムリープものでもウディ・アレンですから、ちゃんと皮肉も効いてて、奥の手もあって、オチも考えさせられて、脚本の素晴らしさに唸らされます。アレンの皮肉はいつだって、街と音楽と女性の美しさに彩られて、嫌味なく届いてきますね。美しいものと女性とユーモアと皮肉と、自分の好きなものばっかり撮ってるアレンじいさん幸せだろうなあ。
そういえば本作のレビューにも書いたけど(まだ未公開)、ウディ・アレンってぼくが生まれる10年も前、1965年から50年間、ほぼ毎年映画撮ってるんですよ!すごくないですか!
<4位> 何者
これも有村架純ちゃんとか佐藤健さんとか山田孝之さんなもんで、就活を舞台にした青春恋愛ものかと思ってたら、真逆のホラームービーでびっくりしました。冒頭からネタバレしてすみません。今年はよく騙されてるなオレ。ツイッターとかリアルで怖いですよお笑。
朝井リョウさんの原作もおもしろかったけど、それをうまく映像化していて圧巻でした。
<3位> 永い言い訳
ぼくが今一番好きな西川美和監督の作品であり、奥さんを亡くした小説家のお話ということで、夏に親父を亡くしたぼくは勝手に運命めいたものを感じてしまった作品。映画を通して人間(自分)の弱さや見てはいけないところをあぶり出す西川作品は、一見残酷に感じられるかもしれないけど、じつのところ、正論では掬い取れないぼくらの弱さを許してくれる、とてもやさしい作品だ。
どれだけシリアスに決めてもどこか馬鹿っぽさが見え透いてしまうモックンを主役に据えたのもさすが。深津絵里さんに竹原ピストルさんなどのキャスティングも素晴らしく、映像の美しさも音楽も完璧。しかも監督本人による小説も素晴らしいときてるんだから、まったくもう嫉妬しちゃうぜ。
<2位> シン・ゴジラ
これみんな思ってるでしょうけど、話題的にも興行的にも『君の名は。』がなければ2016年を代表する衝撃作ですよねこれ。ぼくは大人気ないと言われようともオタクっぽい新海誠さんが好きなので『君の名は。』はあれですけど、そんなん関係なくいやあすごかったわシン・ゴジラ。今年二回劇場で見たのはこれだけですね。また見たい。ぜひ劇場で。
大のエヴァファンとしては、 庵野さんがエヴァ最終章(シン・エヴァンゲリヲン)で描きたかった衝動がすべてゴジラに注がれてしまったのではないかという危惧もあるのですが、まあそうだとしてもしょうがないよな、と許せるくらいに庵野秀明のすべてがぶちこまれた映画にあっぱれです。
<1位> 駆込み女と駆出し男
これは昨年の映画なんだけど、大好きでiTunesで買っていて、年末に見たらまたまた感動しちゃったので第一位になっちゃった。至極個人的な話なんですが、夏に親父が亡くなって自分のアイデンティティが揺らいでて、仕事とか将来のこととか迷っていたところにこれを見たら、ぐいっと視野が広がって、涙がぽろぽろ出てきたんです。親父の喪失に対する涙ではなくて、自分は自分でいいのだという安堵と喜びの涙ですかね。
これもよくできたエンタメでありながら、深い作品なので長く濃ゆいレビュー書いたのでそのうち公開します。映画とはこうありたい、そう思わせる傑作です。最近は井上ひさしさんの原作も読んでます。