好きなものを捨てちゃった人と、好きでいつづけた人。

ネットのメディアとかコラムとか本屋さんを眺めてると、やれダイエットだやれ自己肯定感だやれライフハックだと、物事を解決したり欠点を補うための知識とかメンタリティをいろいろ教えてくれるけども、そもそもそれって本当に解決しなければならない?欠点は欠点でいいんじゃない?なんて思うことがよくあります。

ラグビー元日本代表ヘッドコーチ・エディ・ジョーンズは言います。

「私が日本人選手に対して最初に発見したことは、彼らが自分の強みではなく弱点にばかり意識を向ける点です。私はその発想を逆転させることに努め、欠点より自分の強みを意識させるようにしました」(引用:Number(ナンバー)917・918合併号

敗北の歴史に親和性があるからだけでなく、謙虚を美徳としてきた日本人って、自分の弱点や欠点を見つけるのが得意なのかもしれません。

でも客観的に考えてみると、ぼくらが抱える不安とか問題ってだいたい、気にしなければどうでもいいような取るに足らないもんばかりだったりしません?掃除用品のテレビCMが「おたくの台所バイキンだらけですよ」って脅してくるようなレベルの。


ぼくの永遠のヒーロー・甲本ヒロトさんは、とろけるような笑顔でこう言います。

「あのね、若い人、いろいろ不安だろう(笑)、な、いらいらするしな、それな、大人になっても不安だし、五十過ぎてもいらいらするから(笑)、そのまんまでいいじゃないですか。ものごと解決するよりも、いらいらしたまんまさぁ、ロック聴けばいいじゃん」

これはヒロトも愛するピート・タウンゼントの言葉「ロックは問題を解決してはくれない。けれどそのまんま踊らせてくれる」に通ずると思うんだけども、この「ロック聴けばいいじゃん」の部分は「大好きなことやればいいじゃん」ってことです。

あらゆる物事を解決したり自分の欠点を補おうとする時間があるのなら、そこで大好きなことやろうよ、と。

ヒロトは学校行きたくねえなと思っても、クラッシュやピストルズを聴いたら、元気をもらって学校へ行けたそうです。マーシーはクラッシュがいたからしんどいときもがんばってこれた。ロック聴いてスカッとしても問題は解決しないかもしれないけど、ロック聴いてスカッとしたらつらいときも乗り越えられるっていう、「そういう何か」があれば、人はいつだって明日の岸辺に辿り着くことができるはずです。

ウディ・アレンは「現在って不満なものなんだ。それが人生だから」と映画を撮り、花村萬月さんは「人生のデフォルトは不安だろう」と小説を書き、心屋仁之助さんは「そんなことよりパンツミー」と講演で人を笑わせ(そんなことより好きなことやろうって意味ですよ)、みんな、不安や問題は解決したり消したりするものじゃなくて、そういうのひっくるめて楽しく生きていこうよって言ってるだけですから。

大切なのは、自分が好きなものを好きでいつづけることじゃないですかね。人を不幸か幸せかに分けられるとしたら、それは、好きなものを捨てちゃった人と、好きでいつづけた人ってことかもしれません。

「何か」をずっと好きでいつづけるって力業(ちからわざ)ですよ。そんなに楽じゃない。でも楽じゃないからこそ、楽しいんです。

なに、そこまで好きなことが見つからないって?それを見つけるのが人生じゃないですか。これから見つかるんだと思ったら、こんな楽しいことはないですよ。