Wearable Technology
Wearable Technology / Keoni Cabral
最近、昔はよかったよなあ、と感じる場面が多いのです。

テレビは規制だらけでどんどんつまらなくなるし、なんでもネットですませるから人と人の交流も減っていってるし、学校や教師はモンスターペアレンツに怯えて勉強しか教えてくれないし、効率化を最優先した「成功するための〇〇の法則」みたいな本や記事ばかり並んでるし、昔ながらのお店が減って大型量販店ばかりになってしまったりしているし、ブラブラブラ……。

スマホやネットの普及でずいぶん生活が便利になったと感じる反面、すべてが効率的にシステム化してきて、生身の人間が生きづらくなったなあ、とか思うわけです。

それはもちろん僕がくたびれた中年にさしかかっているということもあるのですが、やっぱり時代は確実に、そして大きく変動しているのです。

あらためて情報革命の渦中にいることを意識してみる

この前テレビで「デジタル界の風雲児」と呼ばれるチームラボの猪子寿之さん(スゴくオモシロイ人なので興味がある人は調べてください)がさらっとこんなことを言っておられました。

「時代が大きく変わるときには、人々のライフスタイルも大きく変わる。情報革命という、とてつもなく大きな変動の中にいる僕らのライフスタイルも、当然大きく変わっていく。」

ずいぶん前からよく聞くような話ですけれども、なぜかこの方に言われると、なるほどそういうことか、と腑に落ちたのです。

かつて狩りによって食糧を得ていた人々は、農業を始めることで安定的な食糧確保ができるようになりましたが、その農業革命の渦中におけるライフスタイルや価値観の変化といったら、とてつもなく激しいものだったのでしょう。

だってついこの前までは、男たちはいかに身体を鍛えあげて、どれだけたくさんの獲物を狩ることができるか、ということばかりに心を砕いていたのに、それよりもどれだけ大きな土地を持っているか、どれだけたくさんの農作物を育てることができるか、ということに価値が移行してしまうわけです。

女性たちだって、体躯の立派な荒くれ男たちよりも、毎日健気に働く安定した男を求めるようになるでしょう。これからはキムタクよりイケハヤの時代になるかもしれません。

我が国の産業革命にあたる明治維新以前と以後も同じです。昨日まで立派な刀を腰に差して意気揚々としていたお侍たちが、いきなり刀を持っているというだけで捕まってしまうのですから。

このような時代の移り変わりを、歴史の授業で知識として仕入れても感慨はありませんでしたが、なるほど今まさに僕らはその激動の時代に生かされているのだと思うと、昨今のいろんなモヤモヤがすこし解消されました。

僕らの不自然が、これからの自然になるかもしれない

ついこの前までは「たくさん食べて、元気に働いて!」と言われていたものです。

身体を使う仕事が今よりも多かったし、そもそもの生活において僕らはもっと動いていたからなのでしょうが、今は「朝食は食べない方がいい」とか「炭水化物を控えるべきだ」とか言いますよね。

どちらが正しいとか間違っているとかじゃなくて、ライフスタイルの変化によって価値観が変わっているだけなのです。

ですからもしかしたら、今は効率化が優先される時代ですから

「食事中も食べ物なんて見てないで、スマホで情報収集をする者が勝つ」とか

「人に直接会う必要なんてない、スカイプで充分」とか

「子どもには小さい頃からタブレットばかりやらせたほうがいい」とか

言う人が出てくるかもしれません。

いや多分どこかにはすでにそういう人がいるでしょうし、そういう人たちは、僕のような「古き良き」を求めるおじさんを旧態依然と嘲笑っているかもしれません。

時代の移ろいを嘆くのではなく、ワクワクして生きていこう

僕の祖父母の時代には、電化製品というのはずっと同じ街の電器屋さんで買っていたそうです。何年も付き合いのある店主に相談して、薦めてくれた製品を黙って買う。不備や故障があればそのお店で直してもらう。そういう連綿とつづく人づきあいが生活の中に溢れていたわけです。

今はアマゾンや楽天などのネットで買い物をする人が多いでしょう。僕だって、家電量販店で製品の実物を眺めつつ、スマホでネットの最安値やレビューを調べて、けっきょくお店では買わないことが多々あります。

親切丁寧に製品の説明をしてくれる店員さんには申し訳ない気持ちもあるのですが、消費者としてはできるだけいい製品をできるだけ安く購入したいのですからしょうがありません。

これからますます、あらゆるものが情報化されて、ある部分では飛躍的に便利に、ある部分ではとても生きづらくなっていくでしょう。

世界や国内の大小のニュースを見ていると、そのほとんどすべての闇の部分にこの情報革命の弊害が隠れているような気がします。アーティストが自身のパフォーマンスについて謝罪したとか、未成年が犯罪動画をネットにアップして捕まったとか、新聞社がテロに狙われたとか、現代の高度な情報網がなかったら起こりえなかった事件や事故ばかりのような気がしてなりません。

うつ病などの精神疾患や、瞬時に世界的に広がる伝染病なども同様です。昔はなかった現代の病。

でもなるべくなら、そういった負の側面を嘆くのではなく、これからより良い時代に変貌していくのだ、と半ば自己暗示をかけるように、誰にも止められない高度情報化社会をワクワクしながら生きていきたいと思うわけです。

「僕らは今まさに、時代が大きく変わろうとしている渦中に生きているのだ」

そう思いながら生きていると、バッドニュースに心を痛めることなく、いくぶんか前を向いて、笑顔で暮らしていけるような気がするのですが、どうでしょうか。

参考書籍

追記

チームラボの猪子寿之さんとロンブー淳さんの対談の後編が、1月24日(土)にNHK Eテレで放映されます。猪子さんも淳さんも、鋭く将来を見据えていてとてもオモシロイですよ。

▶ SWITCHインタビュー 達人達(たち) – NHK