『万引き家族』の安藤サクラがスンゴくよかったので、前から気になってた『100円の恋』を観てみたんだけどね。

まあまずスクリーンに出てきたサクラちゃんがヒドいんだわ笑。メチャクチャ汚え。臭そう。すげーブス。

絶世の美女ではないにしても、もう少しチャーミングな女優さんじゃなかったっけ?

で、俺も、ちょっと陰鬱になる時間帯というか、あれこれ暗く考えてるようなタイミングで観たもんだから、サクラちゃん演じる「一子(いちこ)」の自堕落で底辺でクソみたいな生活が、いちいち痛くて、刺さる。

うわーやだなーこうはなりたくねーなー痛いなー観るのやめようかなー

ってなテンションながら引きずられて見つづけたんだけど。

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そんな一子が、痛々しいながらも、じわじわと、ゆっくり、途中から劇的に〈変わっていく〉わけです。

汚くて臭くて鈍重で、女性としての魅力が微塵も感じられなかった一子が、ボクシングを始めてから、きゅっきゅっと磨かれて、やがて別人のように輝き出す。

この映画の前半のサクラちゃんと後半のサクラちゃんの写真を二枚並べてTシャツこしらえたいくらい。

そんでそんで、今まで観たボクシング映画の中で、ダントツで、一番カッコよかった、安藤サクラ。

クリードより、レイジング・ブルより、ミリオンダラー・ベイビーより、ダントツで安藤サクラ。

32歳でいきなりボクシングを始めた素人の目線が、俺たちと同じリアルだから、ぐいぐい引き込まれるし、カッコよさが浮き世離れしてない。

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痛い映画。

戦う映画。

痛いことって、生きてりゃあるよね。

痛くない痛くないって言い聞かせたって、痛いもんは痛いよな。

愛する人が去っていったり。クソみたいな奴に否定されたり。実際に殴られたり。がんばったのに報われなかったり。

気にしないで前向いていこうって思っても、痛いのは痛いじゃん。

痛かったら、どうするか。

逃げるか。

痛かったら、戦うか。

違えな。

痛いけど、戦う、だ。

痛みから逃れるために、これ以上痛みを味あわないために戦うんじゃなくて、痛くても、自分の道を歩く。

そういうね、言葉にするとひどく陳腐な気持ちが、安藤サクラの白目剥いたおぞましいほどの表情から伝わってくる。直接心の奥底に流れ込んでくるみたいに。

俺はね、心の理とかタオとか老子とかを学んでいくうちに、「敵なんてどこにもいない」「世界はやさしい」「戦ってはいけない」「すべてを受け容れる」「これでいいのだ」みたいな思想に支配されがちだったんだけど、

戦ったっていい、よね。

もちろん、逃げたって、いい。

でもときには、自分のために、痛いけど、戦う。

敵なんていないかもしれない。世界はもっとやさしいかもしれない。誰かを見上げたり見下したりしてるだけかもしれない。解釈が間違っているのかもしれない。これでいいのかもしれない。

でも、気持ちが戦いたいと思うんだもの。

老子やバカボンのパパのように達観して笑えない。

戦いたい。痛みを味わいたい。それでも戦って、肩を叩きたい。

ふう。書けば書くほど映画が陳腐になりそうなのでもうやめるけど。

「怒る」って、ちっとも悪いことじゃないよな。

泣いて、笑って、怒って、つまずいて、立ち直って、戦って、また泣いてよ。

ちなみにこの作品、「松田優作賞」って脚本賞受賞作なんだけど、その縁で公式サイトに松田美由紀さんとか新井浩文さんとかのトークショーが載っててすごくおもしろかったよ。じゃーね。

今ならAmazonプライムで見れるよ。

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