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『万引き家族』は、〈鏡〉みたいな映画だった。

筋書きや結末はさほど重要じゃない。

ある家族のかたち、それはあまりにしんどくて、息苦しいかたちだけれど、あくまでも、ある家族のかたちを描いた作品。

それは、家族に育ち家族に生きる俺たち誰もの〈鏡〉なんだと思う。

万引き家族の家族を眺めて、なにを感じるか。

馬鹿な親父だなあ。

ヒデえ親だなあ。

貧乏はイヤだなあ。

うちはまだマシだなあ。

子どもは可愛いなあ。

家族って素敵だなあ。

ロクデナシだけど素敵な親父。

成功してるけどクソみたいな親父。

金なくても幸せってある?

家族ってクソだなあ。

やっぱり家族だよなあ。

日本って恵まれてるなあ。

日本ってクソだなあ。

人間って素晴らしいなあ。

人間ってクソだなあ。

虐待ってなんで?

家族って、なんだろう?

これまでもずっと疑似家族を描いてきた是枝監督。

今までの作品よりも、美化しすぎないで、クールで乾いててよかった。

家族って、なんだろう?

俺が思春期の頃に影響を受けた花村萬月の小説も、家庭に居場所を見いだせなかった者たちが、音楽や犯罪やオートバイや、いろんなもので繋がって、家族みたいに暖めあう物語ばかりだった。

家族って、なんだろう?

「捨てたんじゃないよ。拾ったんだよ。誰かが捨てたものを」

捨てられた者たち、孤独な者たちが集まって、暖まろうとした。

誰かが捨てた子どもを、拾って、抱きしめた。

家族って、なんだろう?

殴る親、捨てる親。拾う他人、抱きしめる他人。

この映画には答えが用意されていない。それが答えだったりする。

家族って、なんだろう?