thelastjedi

14歳の俺と42歳の俺が昂奮した。

『最後のジェダイ』、意外とよかったですよ。いいスターウォーズでしたわ。

完全無欠の大傑作、というわけじゃないけれど、俺は14歳の少年みたいにワクワクしながら、40年あまりの経験を重ねたおっさんならではの理解と喜びをも同時に噛みしめました。

この昂奮と喜びを象徴する何かを手に入れなくてはと、グッズ売り場に並んでレイのライトセーバー買っちゃったくらいにはよかったです。スター・ウォーズは物販が命ですからね、俺の払った金がフォースとなって次回作に繋がるのです。

エンタメ超大作の脚本と、ジェダイ哲学のバランス。

で、俺にとって何がそんなによかったかっていうと、ジェダイの教えになぞらえて言えば、「完璧なバランス」っていうかね。

エンタメ超大作の王道としてよく練られた脚本、つまりハラハラドキドキと予想を裏切る展開をふんだんに盛り込みながら、物語の根幹に、ジェダイの教えや生き様、といった、シリーズに一貫したテーマが眩しく強大に堂々と据えられているこの絶対的バランス!

おっさん臭いことを言えば、若いときは、この世界観とかキャラクターとか戦闘機とか武器とか、そういうSFファンタジーの表層にエキサイトするのだけれど、ある程度歳を重ねて人生の折り返し地点を過ぎてくると、その奥にある、1970年代にルーカスが着想したジェダイの哲学(東洋思想や世界中の神話の混合と言われてる。俺的には老子のTAOに近いと思ってる)が、すんげえ強く濃く伝わってくるんですね。

まあ俺が今さら説明する話でもないんだけど、スターウォーズってのは、光と闇の物語ですよね。ライトサイドとダークサイドの銀河戦争。

で、誰もが光と闇の両面を抱えていて、ちょっとしたきっかけでどちらに転ぶかわかんねえぞ、というのは、俺たちの人生そのもの。自分の好きな映画スターとかスポーツ選手とかをライトサイド、陰惨な事件を起こす最悪の猟奇殺人者とかをダークサイドだと思えばわかりやすいです。俺やあんたの話でもあります。

ダークサイドへの入口はいつも「悲しみ」。親に愛されなかった、師に捨てられた、望まれずに生まれた、という愛の欠乏。二度とそのような悲しみは味わいたくないという「恐れ」が「怒り」を呼び、「怒り」は他者への「憎しみ」へと変わる。他者を憎むというのはまわりまわって自分を憎むという、最も過酷な「苦しみ」のループを生む。

そうならないためには、あれこれ言うけど、けっきょくつまるところあれだよね、あれ、言葉にするとかるいけどさ、ほら……「希望」ってやつさ。

というのを、何十年もかけたシリーズの中で、ジェダイという思想を通して伝えているんだけど、今作は、時代背景や映画のテクノロジーの進化等々と照らし合わせても、完璧なバランスであったなとおっさんは思ったのでした。IMAX最高。

ちなみに別の側面から見ると、銀河を舞台にした壮大なる「親子喧嘩」なんだよね、まったく。でも神話ってそんなのばっかりだし、人々が抱えるあらゆる苦悩の根っこを辿ると、けっこうな割合で親との関係性に辿り着くので、そういうことなんでしょうね。

ダークサイドがあるから完璧。

さて、完璧なバランスっていうのは、良いところばかりではないってこと。光あれば闇あり。それではじめて完璧なんですから。

本作のダークサイドを言えば、脚本が練られすぎ。おもしろくすりゃいいってもんじゃない。

こんだけの超大作で失敗できないですから、何ヶ月もかけて監督が脚本を書いて、週に何度もルーカスフィルムのストーリー部門のスタッフと練り直して、っていうのを繰り返して、観客の期待と予測を適度に裏切りながら絶対にコケないシナリオに仕上げたわけです。作り手としては完璧かもしれないけど、観る方からしたら詰めこみすぎ。計算し尽くして予定調和を壊そうとしたあげくの壮大なる予定調和、みたいな。

でもそんな脚本でなければ、世界中でこれだけ大々的なキャンペーンを打つような超大作とはなり得ないわけで、おじさんを14歳に戻すほどの昂奮はもたらせられなかったわけで、やっぱり「これでいいのだ」なわけだけど。

あと、主人公が女性で、パートナーが黒人で、主要キャラにアジア人や南米の人がいて、というように、多種多様な人種とキャラばかりでいかにもヒーローという感じがしないのはいいけれど、それもマーケティング的な悪臭が漂うし、やっぱりいいところわるいところが混在して、絶妙にバランスしているって感じがします。

TAO的な思想哲学を中心に見ていると、ときめくセリフがたくさん出てきます。俺的には、最後のほうでレイアが言った「You have everything you need」ってセリフ(たしか)が、シンプルだけどまさに世の真理を物語っていて、静かに震えました。「準備は整っています」って訳されてたけど、ジェダイ的には「必要なものは、常にあるのです」でしょう。必要なものは、いつも、すべて、あるんです。

ではでは、フォースと共にあらんことを。

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