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正直、俺たちの青春時代にぶっ飛んでたあのエイリアンシリーズを今さらやるんだから、たとえオリジナルのリドリー・スコットが監督やるったって、そんなに期待はしてなかったんだけどね。

ちなみにちょっとだけ解説すると、エイリアンって、ちゃんと見たことなくても、あのグロテスクな化け物の造形はみんな知ってるよな?

H.R.ギーガーっていうぶっ飛んだアーティストが創造した未知なる生物を主役にした、SFとしてもホラーとしても超一級のヤバい映画。第一作は1979年公開。俺が四歳の頃だな。

ちなみにバブルの頃に六本木だか麻布だかにギーガーが監修したグロテスクなバーがあって、親父に連れてってもらったんだけど、あそこはガチでクレイジーな異世界だった。バブルってクレイジーを産む余裕があって素敵だったよね。

それはともかく、このシリーズが成功したのは、監督のチョイスが本当に素晴らしくてね、第一作のリドリー・スコットは、他にも『ブレードランナー』に『グラディエーター』なんていう映画史に残る名作をたくさん撮ってる人で、『エイリアン』シリーズをライフワークにしてる「創造者」なんだけど。

次なる『エイリアン2』を撮ったのが、『ターミネーター』で頭角を現した頃の若きジェームズ・キャメロン。今や、『アバター』『タイタニック』と世界興行収入の1、2位を占めるスーパーヒットメーカーを抜擢する先見ね。

そんで、シリーズものがだいたい破綻する第三作目にピックアップしたのが、若き日のデヴィット・フィンチャー。俺超好き。のちに『セブン』や『ファイトクラブ』、『ゴーンガール』など、ダークな名作を量産したクールな監督だけど、なんとエイリアンがデビューっていうね。

まだまだ驚きなのが第四作で、なんとフランス人のジャン・ピエール・ジュネ監督を大抜擢。『デリカテッセン』なんてアーティスティックでダークでファンタジーでクレイジーな世界観をこしらえる人をエイリアンって、素晴らしすぎ!俺が大好きな『アメリ』を撮ったのはエイリアンの後だからね。あのモンマルトルの夢みたいな街並みに健気で風変わりなフランス娘を描く人がエイリアンだよ笑。シガニー・ウィーバーもエイリアンもどことなくユーモラスなんだよな。

とまあ、話が長くなっちゃったけど、俺らアラフォー前後のおっさんたちは、このエイリアンシリーズの1,2あるいは3までくらいの、まだ若くてぴちぴちしてたシガニー・ウィーバーのタンクトップ姿とやたらクリアでさらさらした体液を滴らせるエイリアンの戦いに、青春期の内なる闘争衝動を暴発させられてエキサイトしていたわけ。

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時は流れて2012年に、その前日譚として『プロメテウス』ってのがつくられたらしいんだけど、タイトルにエイリアンがなかったのもあって、俺は完全スルーしてた。

そんでまあ今回、久々に『プロメテウス』の続編が『エイリアン・コヴェナント』っていう名称になってたのもあって、ひさびさに観てみたっていうわけ。ずいぶん長え前置きだな笑。

過去の名作シリーズの続編だから期待値は低かったのもの、劇場でちゃんと観てみたら、思ったよりイケてるじゃん、ってのが率直な感想。でも今や、ノーランが『インセプション』とか『インターステラー』とか撮ったり、ホラーもどんどん進化してるから、あの頃のように世界がぶっ飛ぶような感覚は得られなくて、まあまあ、こんなもんだろ、ってのも正直なところだった。

でもせっかくアラフォーにしてエイリアンの最新作に触れてあれこれ若き日の興奮が蘇ってきたので、さっきAmazonで『プロメテウス』観てみたんだけど、あれあれ、けっこういいじゃんこれ!

『コヴェナント』に不可解な部分が残ったから、その謎解きみたいな楽しさもあったんだけど、エイリアンのルーツを探るっていう意味だけじゃなく、現代のSFホラーとしてふつうに楽しめた。

俺男だからちゃんとはわかんないけど、妊婦は絶対観ちゃダメだからねこれ。スリルじゃすまねえ。怖すぎる。

エイリアンってけっきょくのところ、極限の宇宙を舞台にしているだけで、やってることはホラーの常套なわけ。未知なる敵をナメてる奴らが最初にやられて、チーム全体が危機に陥って、はなからヤバいぞって危惧してた奴らが戦って、最後に一人生き残って安堵するんだけど、じつはまだ敵が生き残ってるっていう絶望エンディング。

それをね、いつまでも、同じことやってんだけど、ぶっちゃけ飽きちゃうんだけど、それでも飽きさせないようにあれこれ頭をひねってここまでこしらえるってのは、やっぱちょっと感動しちゃうんだな。

リドリー・スコットって、八十歳近いんだよ。九十越えてバリバリ書いてる橋田壽賀子先生とかもヤバいけど、この年でまだまだ新しい境地に歩みを進めて、けっこうちゃんとした成果を上げてるってホントスゲえと思う。

この『プロメテウス』シリーズもまだつづくらしいから、これからも楽しみ。こういうのって、ビートルズを誇るのと同じで、リアルタイムに生きられて本当によかったと思うよ。

ちなみに全シリーズにわたって、脚本や制作に「デヴィッド」と「ウォルター」がいますね。『コヴェナント』のキーになる人名ですね。

あの頃エイリアンに衝撃を受けたティーンエイジャーたちが、今おっさんになって、自分や世界をより深く広く見られるようになったのと歩調を合わせるように、エイリアンの最新作シリーズもまた、以前より深く広い世界観で描かれてる。映画と共に年を重ねられるなんて、なかなかクールだよな。