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最近、僕もじじいになったもんだなあと感じるのは、野菜が非常においしくなってきたことだ。

以前なら、ラーメンだ焼肉だエスニックだと、刺激が強く脂っこい食物ばかりを欲していたのに、今はちょっと飲みにいこうかとか、お昼になにを食べようか、というときに、自然と気持ちが野菜の方を向いていることが多い。

とはいっても、野菜中心の食生活をしているわけではなくて、今でもわりと頻繁に焼肉もラーメンもパスタもたらふく食べるわけだけれど、それでも日常的に口に入れるものの中に野菜の割合が増えてくると、直接的に身体が楽になっていくのを実感する。野菜を食べると、身体がかるくなって、強ばりがとれて、すなわち心もかろやかになる。

最近は家内に頼んで、冷蔵庫に、いつでもすぐに食べられる状態にした野菜を保存してもらっている。僕は食べ応えのない葉物野菜があまり好きじゃないので(タモさんが言うように空気を食ってるみたいで)、ブロッコリーやアスパラガス、オクラ、キャベツ、ヤングコーンなどを中心に、火を入れたものをタッパーに入れて保存してもらう。

レンジでチンでいいと僕は言うのだけれど、わが家のよくできた家内は、いつも無水鍋でおいしく仕上げてくれる。すると、味つけもせず火を入れただけの野菜がごちそうになる。

無水鍋というのは、厚手のアルミ合金でできた鍋で、その高い熱伝導性と密閉性で、食材を焦げつかせることなく、短時間に高温で調理ができるという代物だ。

その名の通り、水を入れなくても(実際には少量の水を入れたりもするけれど)、野菜の水分だけでじっくりと火が入るので、ぎゅぎゅっと濃縮された素材本来の味を味わえる。茹でたり蒸したりすると栄養分だけでなく味わいも逃げてしまうところだけど、野菜の甘み旨みがじつに濃密な味になる。

なにもつけなくてもおいしいが、僕はそのときの気分でドレッシングを代えて食べている。最近は伊豆の土産に買ってきたワサビマヨネーズがお気に入りだな。

脂っこいものを分解するのにも体力を使うようになってくると、野菜がおいしくなるのは当然なのだろうけれど、とはいっても、あれこれ鬱屈するようなことがあったり、くたくたに疲れてしまって、えいやっとおいしいもんでも食べたい、というときはいくらでもある。

そんなときはカルビや豚骨スープをめがけて家を飛び出すのだけれど、そこまでじゃないときには、野菜のごちそうがあるとだいぶ救われる。

まだ今日は肉じゃない。まだ今日はラーメンじゃない。けれどうまいもんをたらふく腹におさめたい。そういうときに最高のごちそうなんである。

野菜なのにごちそう。子どもたちにはまだまるでわからないみたいだけれど。

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▲ 週に一度は食べる「ベーコンと野菜の無水鍋炊き」。

水は入れずに食材の水分だけ。味つけはかるく塩こしょうのみ。

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▲ 下の方にはキャベツやカボチャを。

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▲ 旨みの凝縮した出来たてはもちろん抜群にうまい。

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▲ 残りを翌朝に食べたり。

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▲ 清冽なセロリの香りが効いた野菜スープもたまらない。

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▲ 無水鍋で炊いた野菜をタッパーで冷蔵しておくと、いつでも食べられる。

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▲ 野菜の色味が鮮やかでないのは、無水鍋で炊いたからこそ。旨みの凝縮した色彩だろう。

ネギとショウガで茹でたササミにゆで卵をつけたり。

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▲ こんな見た目なのにごちそう。地味なのに、味は濃厚で力強い。おじさんの境地である。

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