家人の忙しいスケジュールの合間を縫って、二人で街へくりだした。
茅ヶ崎でいちばんうまいという噂の鮨屋で、昼からビールをやる。
なるほど。赤酢のシャリが、これは絶妙だ。もちろんネタも抜群だ。
ポケットからGRを取りだして、ひかえめにそっと一枚、撮る。
ワサビの量がほどよく、すべてがほどよい。
店内はすっきりと洗練されている。空間もちょうどいい。立地もいい。
女将さんとローリング・ストーンズの指輪の話をして、再訪の約束を交わした。
電車で二つとなりの駅まで出て、古着屋をまわる。
オートバイに乗るときでも裾が上がりすぎず、ちょうどよく傷んだ501を手に入れた。
さんざん迷ったあげく、着るかどうかわからないくたびれたTシャツを買った。
昼からやってる居酒屋で蛤を焼き、街を歩き、英国風のパブでフィッシュアンドチップスをギネスで流しこみ、街を歩き、すこし休んでから、家路につく。
子どもたちと猫としばらく遊んでから、また二人でワインをやる。
セブンイレブンの冷やおろしうどんを啜る。
やがていつの間にか、夜が終わり、朝がきている。
寝ぼけた頭で、GRの写真をMacに取りこむと、昨日の断片がいくつも、そこにあった。
なんだ……。一日中、酒を飲んでいただけじゃないか、と苦笑する。
もはや無意識に、いつの間にかシャッターを切っているから、なんでもない自然な日常が切り取られている。
iPhoneでも一眼レフでもない、野暮なシャッター音とは無縁のGR。
無色の存在感だからこそ、成せる技なのだろう。