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市場は豊洲に移転したものの、場外の商店街はかわらず賑わっていると聞いて、寿司でもつまもうと築地へやってきた。

銀座中央通りのAppleストアや伊東屋なんかをひやかして、四丁目の交差点を曲がる。歌舞伎座を見あげながら晴海通りを進み、松竹の本社が入った東劇ビルを抜けると、街はいつの間にか下町風情にかわっていて、気づいたらそこはもう築地である。

日本のお寺さんには見えないインド様式の築地本願寺に目を奪われていると、通りを挟んだ右側が築地場外市場。信号待ちをしていたら、前から恰幅がよく眼光の鋭い白衣姿のおいちゃんが歩いてきたので、よく見たら、先日三億円だかでマグロを仕入れてニュースに出ていた某寿司チェーンの社長であった。

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それほど広くない場外市場は、平日だというのに観光客で溢れていた。外国人向けの観光マップに載っていることもあってか、アジア人や欧米人だらけ。小さなアメ横といった風情だが、どこか異国に迷いこんだようなふしぎな感覚も楽しい。

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場内の半分以上がお寿司屋さん。刺身をつつきながらしっぽり吞む、というよりは、ちゃっちゃと寿司をつまんでさっさと出ていく、という市場の台所ならではの江戸っ子気質を感じる。

観光客向けにわかりやすくパッケージングされたお店が多いなか、卸問屋の狭くて暗い通路を歩いていると、唐突に寿司カウンターがあって、お客が並んでいる。外なのか中なのかわからない、本当に通路にいきなりあるお店で、これはおもしろい。

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カウンターにつくと、働く人も観光客も風と共にどんどん背中を通りすぎていく。とりあえずメニューから握りのセットをお願いしたが、駄洒落全開の陽気な大将と話しているうちに、ネタケースからオススメをいただくのが楽しいのだと気づく。

店の電話が鳴ると、大将がきゅうりやたくあんに見事な飾り包丁を入れながら、__はい、こちら警視庁、なんてやってる。

「茅ヶ崎だったら、魚はうまいだろうよ」
「なんだかんだ、寿司がうまいのは東京ですよ」
「そうかい? でもあの生シラスだけはそっちじゃなきゃ食えねえもんな。沼津よりそっちのがうまいんだよ」

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家族で行く回転寿司もいいし、しかめっ面で職人気質の大将の高級店もいいし、こういう街中にいきなり出てくるお寿司屋さんも、なんだかいいもんだ。いつまでもうだうだしてても野暮なんで、熱燗つけてちゃちゃっとつまんで、さっさと出てきた。

今度は卵焼きも買わなくっちゃな。