前回☞ 映え(バエ)る猫と伏見稲荷と360度〈京へ西へ。その七〉

さてさて、伏見稲荷を後にしたオイラは、雲龍院方面へ、京の裏路地を進みます。

しかしアレだね、伏見稲荷から住宅地を抜けたんだけど、京都って所は、どこにでも観光客がいるね。

もちろんオレもなんだけど、Googleマップのおかげか、こんな所に?っていう、地元の人の生活空間にまで、外国人とかうようよいて、観光地に住むってなかなかだなあ、なんて思ったよ。

そんなことを考えながら、歴史ある寺社とは違う、京に暮らす人々の住処を眺めながら歩いていたら、ものごっつ荘厳なお寺が目に入って、するすると引き寄せられて門をくぐってた。

どうやら東福寺っていうお寺さんで、宗派もなんも知らんけども、まあ見るからに歴史と由緒のある感じで、人もめちゃくちゃたくさんいるし。紅葉の名所でもあるらしい。

入ってすぐの所にあるドデカい門と、その奥のこれまたドデカい法堂の立派さに、息を吞んだね。

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おお、と一歩退いてしまうような迫力に圧倒されたよ。

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こうやって、大きさや迫力で人々を圧倒する、ってのは、昔からあるんだよね。宗教でも、音楽でも、なんでも。

オーケストラ、クラシック音楽だって、アンプリファイアっていう、電気で音を増幅する装置が無かった時代に、無数の楽器を揃えて、大音量で人々を圧倒させてたわけでしょ。

こういう寺社とか、お葬式でも思うけど、線香の独特のやすらぐような香りに包まれながら、炎に揺れる仏像を眺めて、あの重く低くどこか脳に直接響くような読経を聞いていると、日常から離れるからね。すっと。生きるを、思う。

いつの世も、人々の心を揺さぶるために、人はいろんな工夫をしてきたわけだ。

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紅葉は素晴らしかったよ。混雑するのも納得なくらい。

庭園も、それを囲む建造物も、唸っちゃうほど、スゴかった。

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まあでも、めちゃくちゃ混んでたからね。

停滞を避けるために、止まらないでくださいとか、写真撮影禁止ですとか、至るところでスタッフが声がけしてて、自然ではなく人ばかりが気になってしまって、興が冷めたのはたしかだけど、まあまあ、そんなもんや。

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そしたら、境内に、昔ながらの茶屋みたいなのが出ててね。そういうとこあんま入らないんだけど、ふらふらっと。

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珈琲と抹茶シフォンのセット。ひっくり返るくらいうまかった!

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はあああ、って、魂が抜けるような声が漏れるほどに。

オレ、シフォンケーキって嫌いなのよ。なんか、ふわふわしてるだけで、うまくもなんともないと思ってた。オシャレ感だけ出しやがってって、憎んですらいた、なぜか笑。

でも、めちゃくちゃうまかった!

きっと、ここのシフォンが特別なわけじゃないと思うんだ。ただ、歩き疲れて、糖分を欲していたときに、絶妙な場所とタイミングで、お抹茶のふわふわシフォンにホイップにあんこの甘さと珈琲の苦みと温かさが、じわっと沁みて、心身ともに蕩けたんだろうね。

ああ、シフォンってこういうもんかあ、と。

お腹はすいてない、でも甘いものが欲しい、ってときに、こんなにいいもんはないね。堪能しましたよ。

愛想はないけど、若さと元気溢れる学生バイトもなんか気持ちよかった。ごっそさん。

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で、シュガー・チャージして元気になったので、いよいよ今回の旅の目的の一つ、雲龍院へ向かいます。

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東福寺から雲龍院への道が、紅葉がすごいんですよ。もうずーっと。

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さらに昨日から曇ってたのが、徐々にすーっと晴れてきてね。やっぱり陽光があると、紅葉も映えるんだよね。

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そんなしみじみとした感慨を味わえたのも、曇りがあるからだなあ、なんて思ったりしてね。曇りは、晴れのためにある、晴れは、曇りのためにある、なんてな。

途中から、どんどん人がいなくなってね。しばらく、ほとんど誰にも会わずに一人で歩くところがあって。

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さっきまで人混みにいたから、なんかこう、すっと、静かになって、気持ちもやすらいで、心地よくてね。

そのとき、何の気なしに、ふと、後ろを振り返ったの。坂の上で。

そしたら、ものすごく綺麗な景色でさ。

ただの、坂道で、なんの変哲もない、紅葉が綺麗だとか、寺社があるとかでなしに、なんでもない風景だったんだけど、なぜか、心を、打たれた。

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ときどき、後ろを振り返ると、素敵な景色に出会う。

人生と同じやん、なんて思ったわ。

前ばっか向いて歩いてたけど、こんな素敵な道を歩いてきたのか、こんな素敵な人生を生きてきたのかって、秋のひんやりした風を浴びながら、涙が出そうになった。

年を重ねるのって、わるくないよなあ。つくづくそう思うぜ。つづく。

☞ 四角く切り取るか、ただ在る、を見るか。迷いの窓と悟りの窓〈京へ西へ。その九〉

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