西川美和って監督、スゴいんですね!
話題になってたのは知ってたけど、実際に作品を観てちょっと驚きました。他の作品も絶対観たいと思わせる数少ないお方です!
一瞬でファンになっちゃった!
この映画は家内がレンタルしてきた作品なので、予備知識も期待度も限りなくゼロ。
阿部サダヲと松たか子という、好きな二人が主演だということでちょっと観てみるかってなったんだけど、完全にやられましたね。
話題の西川美和監督だということも知らず、結婚詐欺の話だということも知らず、何もない無垢な状態で、このような素晴らしい作品に出会えたことは本当にラッキーです。
ということで、いつものように感じたことを淡々と書いてみます。
映画は早朝の青果市場のシーンからはじまる。
そこに写る色彩、雑音、雰囲気だけで、おや、と思わせる。開始数秒で、これはきっといい映画だ、という予感が立ち現れる。
なんかこう、画がいいのだ。
なんでもない路地裏の交差点、青果市場、朝の道路、坂道、アパートの部屋など、そのまま切り取って壁に貼りだしたくなるような、じつに絵になる場面がやたらと多い。
ストーリーが動く前に、才能のある監督だな、と思わせたのはきっと、そのカメラワークと、すごくリアルに聞こえる会話や街の雑音などの音響効果かもしれない。
阿部サダヲと松たか子は、夫婦で居酒屋を経営したり、ラーメン屋でバイトしたり、高級料亭で働いたりと、飲食店のシーンがたくさん出てくるんだけど、そこで働いている人たちのキャラクターや仕事の仕方、雰囲気がすごくリアルで驚いた。
僕も長いあいだいろんな種類の飲食店で働いた経験があるのでわかるんだけど、監督も経験あるのかな。
鈴木砂羽ってやっぱりいいですね。あの人の魅力は今の年齢くらいがいちばん輝くんじゃないかな。寂しい笑顔とか、すごくいい顔をする。
ソープ嬢が預金通帳をビニール袋に入れてトイレに隠すシーンとか、松たか子が阿部サダヲの足の上に乗っかるシーンとか、ゴッドファーザーへのオマージュっぽいシーンがいくつかありましたね。
で、そのソープ嬢が「自分を幸せにするのは自分だけ」っていうようなこと言ってて、その通りだなあと感心しました。誰かこんなこと言ってなかったっけ?
結婚詐欺を実際にやる人って、バリバリのイケメンじゃなくて、阿部サダヲみたいなやさしい感じの人が多いらしいですね。
あいかわらず何をやらせても器用にこなしてくれる阿部サダヲだけど、松たか子ともども、キャスティングの大勝利です。他にこの夫婦を演じられる人はいないんじゃないかな。
松たか子は、ホントにいい女優さんになりました。今作は彼女の表情と視線が重要な意味を持つんだけど、その微妙な変化は、ちょっとぞっとするくらいに巧みで、怖かった。
ナプキンのシーンとか、自慰のシーンとかもあって、松たか子の本気を見せてもらいましたね。
普段気を張って生きているしたたかな女性が、ひょんなことで涙してしまうところは、僕の涙腺もゆるむほどでした。
松たか子演じる嫁は、どんなときも旦那を許し、励まし、健気に働く最高の嫁。
けれどけっきょく彼女のプロデュースによって、旦那は結婚詐欺をはたらいてしまうのだけど、彼女は純粋に旦那を愛し、すべてを彼の夢に託したからこそ、そんな行為に及んでしまったんだよね。
なんていう風に、すんなりまとめられるほど、西川美和作品は甘くない。一筋縄じゃいかない。
僕は映画『プレシャス』が好きなんだけど、極度に太っている女性の心理とか、エグいところをついてきますよ、西川監督は。
その言葉は残酷で、でもリアルで、監督自身の容姿が端麗であることもあって、やたらとコワイです。
夢売るふたり、というタイトルは、結婚詐欺のことを言ってるわけなんだけど、結局彼らに夢を売られた(騙された)女性たちが、みんな幸せになっていく感じで終わるのが、いいんですよね。
夢を売ったふたりは、けっきょくうまくいかないんだけどさ。
西川監督、目が離せません!
次は「ゆれる」を観てみようかな。
参考サイト
メチャクチャ濃くてためになってオモシロイレビュー記事↓
予告編
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