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W杯で躍動するスーパースターたちには、そうとうのプレッシャーがかかっているんだろうけど、ぶっちゃけあんまり実感が湧かない。

それより、試合の流れを左右する微妙なジャッジを下す度に、屈強なフットボールプレイヤーたちにつめよられる審判にかかる圧力は、すこしだけど想像できる。

仕事やプライベートでどんなに重圧がのしかかってきても、世界中の人々からの矢面に立たされている西村主審に比べれば、そんなもんは屁でもないのかもしれん。

 

2014年ブラジルワールドカップ開幕戦は、開催国ブラジル対クロアチア。自国開催で優勝を義務づけられたブラジルにとっては大事な一戦だが、大会初戦というのは今大会のジャッジの方向性というか、塩梅(あんばい)を示す意味合いもあって、審判団にとってもすごく重要らしい。

スラムダンクかなんかで「審判がラインを引く」という表現を使っていたけど、「今大会はこれくらいの接触でもファウルを取られる」とか「あの程度なら審判は流す傾向にある」とかいう方向性が、開幕戦である程度決められてしまうんだって。公平性に欠ける気もするけど、どろっとした人間味があって、こういうのは僕は好きだ。

ともあれ、そんな大事な開幕戦のジャッジを務めた我が日本代表の西村さんなんだけど、さっそく開幕戦で疑惑のPKを取って、世界中で賛否両論、いやほとんどが批判か、が湧き起こっているらしい。

あれが誤審だったかどうかって話はとりあえずおいておいて、笛を鳴らした直後にクロアチアの選手数人に取り囲まれて抗議を受ける西村さんの様子を見て、僕はなんだか勇気というか、活力をもらったんだ。

 

その日は十三日の金曜日で、家内が体調を崩したので病院へ連れていって、取引先でプレッシャーのかかる案件をどうにか処理して、意気揚々と社に持ち帰って報告したら上司にダメ出しされて、お客さんには叱られて、仕事の内容で同僚には恨まれて、予定外労働で家族には迷惑をかけた挙げ句に途中で仕事をほっぽり出して帰らなければならなくて、という、じつに後味の悪いストレスフルな一日だった。こうやって書き出して客観的に見るとたいしたことないような気がするけど、そんときはもう会社なんか行きたくないって切実に思っていたんだ。

けれどあの西村さんの毅然とした顔を見ていたら、僕の身体にもきりっとした芯のようなものが刺さったような気がして、なんだかやる気が出てきたんだよね。エルサなら「すこしも寒くないわ」って言うところか。

結果的には誤解をまねいたり、一時的には他人に疎まれるかもしれないけれど、僕は決して恥ずかしいことはやっていないのだから、西村主審のように胸をはろうって。

プライド、というと語感が微妙だから、誇り、と言おうかな。仕事だけでなく、こうして息を吸って毎日精いっぱい生きていることに誇りを持って、陽のあたる場所を堂々と歩いていこうと、なんかあらためて思ったんだよって話。

ちなみに、フレッジのマリーシア(ずる賢さ)も含めて、王国の強さですよね。でも今回のブラジルはあんまし怖くないねえ。