コラム/エッセイ

ハイテク墓前に吹く風は、お義父さんからの最後のプレゼント。

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お義父さんの四十九日法要へ行ってきた。

快晴の空。気温は三十度まで上がったが、浅草の東本願寺には涼しい風が吹いて、気持ちのいい昼下がりだった。

四月の葬儀から久しぶりにお会いする親族の皆さんにこれといって変わったところはない。変わったのは、あれからろくにごはんが食べられずに、15kgも痩せてしまった家内だけだった。

東本願寺は、浅草の細々とした路地を入ったところにある。下町の入り組んだ街並に突然現れるその建物の荘厳な姿に、しばらく圧倒されてしまう。

歴史あるお寺さんであると同時に、大都市トーキョーらしく、ここではハイテクなお墓が用意されている。

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お骨はエレベーター式の立体駐車場のように管理され、室内にあるハイテク墓参りシステムの墓前で手を合わせ、線香をあげる。

ぢりぢりと太陽に肌を灼かれて、汗を流しながら墓前で故人を想う、というのが、日本のお盆のよき姿として思い浮かぶのだが、人口が爆発している都心では、こんなシステムの方が便利なのだろう。

もちろん場内には一般的なお墓もあって、この日もせっせと墓石を洗い清めるご婦人の姿があった。大切なのは気持ちだとはわかってはいるけど、やっぱりああいう風景の方がしっくりくる、というのが本音だ。

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エアコンの効いた法要室で、お坊さんの話を聞く。

昔は、四十九日までは故人のために肉や魚を食べなかったり、髭や髪を切らなかったりする慣習もあったが、四十九日法要が終わったら、忌明けといって、普段の生活に戻るのだそうだ。

家内はそういう慣習にならったわけではないのだが、精神的ショックで食事が喉を通らないまま四十九日を過ごし、昨日かかりつけの病院で新しく強めの薬を処方してもらったので、明日からは普通にごはんが食べられそうだ。

僕は法要室のいちばん後ろに座って、家内の親族たちの背中を見つめながら、連綿と続く家族というコミュニティの歴史に思いを馳せた。

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生まれた地も違う、考え方や価値観も違う、血の繋がっていないこの人たちのコミュニティに、赤の他人だった自分が平然と存在している違和感と、それらを繋ぐ結婚というシステムと、亡くなったお義父さんの存在感と、いつか自分もこうやってこの世を去るのだというさみしさがないまぜになって、僕は白昼夢を見ているようだった。

お義父さんはすべてを許してくれる人だった。

励ましてくれたり、たしなめてくれたり、道しるべになってくれることはあっても、いつも必ず、僕らのすべてを許してくれる人だった。

それが残した子孫にとって正しいことだったのかどうかは、わからない。

けれどその懐の深さと、その途轍もない包容力は、一家の主であるべき僕にとって、大いなる指針になっている。

お坊さんはにこやかに説法を説く。

あなたたちが愛した故人があなたたちの毎日を見てどう思うか、どういう風に生きてほしいと願うだろうか、何をすれば喜んでくれるか、ということをいつも忘れずに、毎日を生きてください。 だから、仏さんはいつも我々を見守っているとか、亡くなっても心の中に生きつづけるというふうに言うのです。

帰りの車中、首都高三号線から都会の街並を眺めながら、家内と仕事や将来の話をする。僕がブログを通じてやりたいこと、世界に貢献するということ、家内がやりたいこと、家族の夢と方向性といった、あまり日常では話す機会のない事柄について、ごく自然に意見を交換できた。

いつもはあまり話さない僕のブログの具体的なことを話しているうちに、ある大きな道しるべというか、今後取るべき方向性が、力強く立ち現れた。迷いが吹っ切れたと言うべきか。いずれにせよ、進むべき道が神々しく見えたような気がしたのだ。

その気づきは、あの世へ逝くお義父さんからの最後のプレゼントのような気がしたけど、たぶんきっと単なる偶然だ。

それでも、こうして定期的に、何らかの折に故人のために家族が集まって、漠然とした将来について想いを馳せることは、何らかの気づきや道を与えてくれるような気がする。

お盆は例年通りキャンプに行く予定だったけど、今年はおばあちゃん家にお世話になって、真夏の墓前で手を合わせてみようかな、と思っている。

エアコンの効きすぎた快適な墓参り室だけれど、それも悪くないんじゃないだろうか。

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