一日の終わりに会うのは、大好きな人でも思い出の人でもなくて、タクシーの運転手だった。
夜の仕事をしていたときのことだ。仕事終わりの乾杯がやめられなくて、毎晩タクシーで帰っていた。
世の中に美味しいお酒というのはたくさんあるけど、仕事終わりに飲む一杯のビールだって、なかなかの美酒だ。
一杯でやめておけばいいのだが、つい楽しくなって、いつも深夜タクシーの世話になることになる。
運転手さんもいろいろいる。
無口だけど心地よい空気の人。
声に出さないけど舌打ちしてる人。
おしゃべりでアメをくれる人。
身の上を心配してくれる70すぎのおじいちゃん。
イラつくこともあったし、逆に気分が良くなることもあった。
一日の終わりに会う人がどんな人かによって、その日の締めくくりが左右されるのはシャクだ。
でも、おじいちゃんの運転手が「イイこともヤなことも、寝て忘れちゃうのが一番!」と言って、からっと笑ってくれると、やっぱり今日はいい一日だったなって思う。
そんな日のことは、寝ても、何年たっても、決して忘れないけれど。