僕はなんでも家内に相談します。
それこそ「今日の靴はどっちがいい?」から「あのブログ記事どうだった?」まで、あらゆることを訊くので、本人はめんどくさいと思っているかもしれないけれど。
でも、それが一番いい結果をもたらすんです。十何年か寄りそってきて、それに気がついた。
僕はわりと白黒ハッキリつけたがる人間みたいです。考え方が極論じみているというか、窮屈な完璧主義というか。
やるならガッツリやる。やらないならまったくやらない。
でもそういう極端な生き方って、正直しんどいんですよね。
家内は、そんな僕の白と黒の絵の具を、水でのばしてくれるんです。
僕が鬱々と悩んで、何かをやめようとしていると、彼女は言う。
「やめなくたっていいじゃない。ちょっと休めば」
将来の方向性に迷っていると、彼女は言う。
「どっちもやってみたらいいじゃない。失敗しても死にはしないわ」
両極端のどちらかに偏ってふうふう息切れしている僕に、もっと楽な方向を見せてくれる。真ん中くらいがちょうどいいこともたくさんあるんだって、教えてくれる。
白と黒って辛気くさくてイヤですね。白と青にしようか。
肩に力が入ってガチガチになりがちな僕は、彼女に話すことですっと力が抜ける。白と青の絵の具が、明るい水色に薄められて、僕の心も軽くなる。
ただおもしろいもので、そんな家内も自分のこととなると、僕と同じくらい極端な選択をして、肩で息をしたりするのだ。
だから今度は、僕が彼女の絵の具をのばしてあげる番だ。