本日3話放送‼️ pic.twitter.com/HmF3SKGNXv
— 吉瀬美智子 (@kagayakurecipe) 2015, 4月 29
連続ドラマ『Dr.倫太郎』がおもしろいので、毎週楽しみにしています。
堺雅人演じる精神科医・日野倫太郎は、患者の話をじっくり聞いて、とことん心に寄りそうことで、投薬だけでは癒やせない心の傷をあたためてくれる。
でも残念ながら、あんな先生は、診察室にはいないんです。
診察室のドアは、いつも開いていない
倫太郎は「いつでもいらしてください。診察室のドアはいつも開いていますから」と言うが、現実では開いてなんかいない。
あれだけ優秀な精神科医で、しかもあんな大きな大学病院であれば、もう患者が殺到して予約を取るだけでも大変なはずだ。
たとえ予約が取れたとしても、一人の患者に割ける時間はわずかなので、ある程度の話は聞けても、やはり中心になるのは投薬治療だ。
倫太郎の予約は数ヶ月先まで埋まってる
でも、倫太郎みたいな精神科医がいないわけじゃない。
数年前に家内が倒れたとき、倫太郎のように話を聞いてくれることで有名な先生を紹介してもらったことがある。
開業医のおばちゃん先生だったんだけど、忙しい中、電話口でパニクる僕に、ゆっくりじっくり話をしてくださった。
その先生は大人気で、しかも一人の患者さんに割く時間が長いから、どうしても一日に診られる数が限られてしまい、予約は数ヶ月先まで埋まってしまっているという。
切羽詰まっていて、それでもどうにか診てくれないかと食い下がる僕に対して、先生は本当に真摯に対応してくださった。
僕はあの方の放った一言一句をこの耳にしっかり覚えているから、Dr.倫太郎にやや現実離れしたシーンがあっても、物語の核心を信じて見ることができている気がする。
倫太郎は診察室じゃなくて、あなたの家にいる。
まず言っておきたいのが、うつ病などの精神疾患の治療は「投薬」が基本です。専門医の判断による正しいお薬を服用しながら、じっくり休養することで元気になっていきます。
治療の効果で言ったら「話を聞いてあげる」という精神療法は、それほど大きな割合じゃないはずです。超極端に言ったら、強いクスリ出してハイになっちゃえばとりあえずは元気になる。
では、効果が薄くて時間ばかりかかる倫太郎のような治療方法は間違っているんでしょうか?
そんなことはないですよね。
僕が、家内との数年にわたる入退院と闘病の経験から実感としてとらえているのは、どちらも大事だってことです。
家内は当時かなり危険な状態になっていたから、入院は必須だったし、ろれつが回らないくらいに強い薬を投薬されて、歩くのにもふらつくほどだったけど、その強烈な薬の効果がなければ、あの闇の淵から戻ってくることはできなかったはずです。
けれど同時に、僕ら夫婦はたくさん話をした。
今までしてこなかったような話でも、これまで過ごしてきた時間の何倍もの密度で、いろんな話をして、僕らに足りないもの、僕らが持っているものについて、あらためて知ることができた。
その「話した時間」があったからこそ、彼女は心から「もう自分は休んでいいんだ」と思うことができたのです。
倫太郎は「もうがんばらないでください。あなたはたくさんがんばってきたんだから」と言う。
僕も当時同じことを家内に言っていました。でも家内はがんばることをやめられなかった。だからもっとたくさん言った。もっとたくさん話した。
そうやって数年をかけて、お薬と話と充分な休養を取って、家内は今、僕より元気なくらいに快復しました。
自分で言うのもなんだけど、僕はあのとき、家内の心にとことん寄り添う倫太郎だったんです。
『Dr.倫太郎』の医学監修は完璧じゃないかもしれない。現実離れしている部分も多々ある。けれどこのドラマには、今まで精神疾患とは無縁だと信じていたあなたが「自分の心も疲れているのかな?」「心が雨漏りしているかも?」と問いかける効果があります。
ストレスだらけの現代社会に生きる僕らは、もっと精神科のドアを叩いていいはずです。
でもきっと、その診察室に倫太郎はいません。
そこにいる先生だって、もちろんちゃんと話は聴いてくれるだろうけど、倫太郎ほどは親身になってくれません。あんなのやってたら、医者の身が持ちませんから。
でもその代わり、その先生は適切で効果的な薬を処方してくれるんです。
倫太郎は診察室じゃなくて、あなたの家にいるんです。
心が雨漏りして、夜中に息ができなくなったら、近くの家族に相談してください。友人や恋人に連絡してください。がんばらないで、隠さないで、家の中の倫太郎を頼ってください。
そしてもし、そういう人が周りにいたら、倫太郎になれるのはあなたしかいません。
Dr.倫太郎は、診察室にはいない。あなたの家にいるんです。