原題は「The Bucket List」。バケツリストだけど、ここでは「棺桶」っていう意味で使われてる。「棺桶リスト」じゃ映画のタイトルにしにくいだろうけど、他にもっといい邦題がなかったのかね。
なんつって放題が微妙なのは今に始まったことじゃないからしょうがないんだけどさ、とてもいい映画でしたよこれ。
先日がっつり感動した『グラン・トリノ』もそうだったけど、老人が主人公で人生の締めくくり方を主眼に置いた作品ばかり観てしまうのは、僕がそれなりに歳をとって無意識に死というものがリアルになっているのかもしれない。
人生80年としたら、あと数年で僕は折り返し地点に達する。おお、まだあと半分も生きられる!と思う反面、え?後は死へ向かって下っていくだけ?なんて思ったりもする。いずれにせよ、早いうちから人生の締めくくり方というか、これからの目標や希望を明確にしておくことは大事だよね。期限は確実に迫っているんだから。
映画を超ざっくり説明すると、余命半年と宣告された二人の老人が、死ぬ前にやることリストを作っていろいろやっているうちに、本当に大切なことに気がついていくっていう、あらすじを聞いただけだとあちゃちゃ〜って陳腐に思える内容なんだけど、そこをうまく仕上げて心に響かせるのはロブ・ライナー監督の手腕とジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマンという希代の名優によるものだろう。
観る前はロブ・ライナー作品だって知らなかったんだ。エンドロールにロブの名前を見つけてひどく納得。うん、いい意味で “深くない” ロブ・ライナーらしい映画だと感じたんだな。
内容の浅い映画だって言ってるわけじゃなくて、ライトでお手軽な感じなんだけど、ちゃんといい映画じゃんていうところが、ロブ・ライナーのいいところだと僕は思うわけです。代表作は言わずと知れた『スタンド・バイ・ミー』とか『ミザリー』とかのスティーブン・キングものだけど、やっぱり僕は年齢的に『恋人たちの予感』の印象が強いですね。メグ・ライアン可愛かったな。
それにしてもジャック・ニコルソンがすごく良かった。昔から大好きで『シャイニング』とか何十回も観てるんだけど、やっぱり『カッコーの巣の上で』とかの若い頃のアクの強い印象があるから、最近の “じいさんになった” 彼の映画は全然観てないんだよな。でもじいさんになろうが、ジャックのアクの強さは健在で、しかもまたそういう役だったもんだから、もう彼の言動を見ているだけですごく愉しめたよ。
『グラン・トリノ』のイーストウッドもそうだったけど、“頑固で口が悪いけど憎めないじじい” っていうの、いいよね。実際にそういうじじいが近くにいて、仕事とか家のこととか大切なことに口出してくると最高に鬱陶しいんだけど、こうしてスクリーンを眺めているぶんには愛おしいほどで、僕は今回もジャックがあの独特の喋り方で皮肉を口にする度に大声で大爆笑してしまっていたよ。
一代で大富豪に登りつめたジャック・ニコルソン演じるエドワードはアクが強くてイケイケの脂っこいじじいなのに対して、モーガン・フリーマン演じるカーターは家族想いでやさしくて本ばかり読んでいる寡黙なじいさん。その対比があまりにも極端で陳腐に見えるのは否めないんだけど、やっぱり本当の幸せって何なんだろうな、と考えるいい機会にはなった。
ちなみに映画に出てくる「棺おけリスト」に「世界一の美女にキスをする」っていうのがあって、あれを達成したときはほろりときたな。
二人は世界中を旅するんだけど、ピラミッドに登ったり北極やフランス、香港とか行くんだけど、そのCGがスッゲー陳腐だったのだけがちょっと微妙な感じ。ピラミッドの上のすごくいいシーンも、CG丸出しで興ざめ。名優二人も使ってお金なくなっちゃったのかな?
あと6ヶ月で死ぬとしたら何をしますかね。ちょっと考えてみよう。
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